Reactive Extensions for JavaScript

MIX10終了しましたねー。何はともかく皆してIE9の話題ばかりで、ああ、InternetExplorerは愛されてるなあ(色々な意味で)、などというのを横目に、私にとっての最大のニュースはReactive Extensions for JavaScript(RxJS)です。Reactive Extensions(Rx)はこのサイトでもカテゴリーを作ってメソッド探訪なんてやってるぐらいに注目していたわけで、当然MIX10でJavaScript版出すという話を聞いた時からwktkが止まらなかったわけですが、全く期待を裏切らなかった!というか、こいつはヤバいですよ?

Reactive Extensionsとは何ぞや、というと、LinqというC#の関数型言語みたいなリスト処理ライブラリ(語弊ありまくり)のイベントとか非同期版です。イベントや非同期処理にたいしてmapとかfilterとかfoldとか、お馴染みなリスト操作関数が使えちゃうという、その発想はなかったわ、なライブラリです。C#版は去年の夏ぐらいにプレビュー版が出て、いまも精力的に開発が続いているのですが、今回はJavaScript移植版が出た、という話です。イベント(onclick!onclick!)や非同期(XMLHttpRequest!)ってのは、勿論C#でも大事なのですが、JavaScriptなんてそれが主役というぐらいなわけなので、C#版よりもインパクトは大きいです。何よりも、C#は言語やライブラリが強力なので別にRx使わなくてもって感じなのですが、JavaScriptは違う。あまりにも貧弱。なので、優れたイベント/非同期処理ライブラリの重要度はC#の比ではなく高い。

RxJSの面白いところはjQueryに対抗するものではなく、むしろ協調動作するように作られていることです。DOM操作はjQuery、イベントや非同期処理はRxJS、二つの強力なライブラリを組み合わせることで、JavaScriptプログラミングは次のパラダイムへ向かおうとしています。御託は、もういいですね、とりあえずサンプルを。

マウスをクリックして四角形を掴んで、マウスを動かして、放すという、ごく普通のドラッグアンドドロップ。素の JavaScriptではどうやって実装しますか?グローバルに状態管理用のオブジェクトを置いて、オフセット用の変数置いて、マウスの状態を監視して、うーん、考えたくない。あまり綺麗に出来そうにない。それがRxJSを使ってみると――

var O = Rx.Observable; // using
 
$(function()
{
    var doc = $(document);
    var area = $("#dragArea");
 
    O.FromJQueryEvent(area, "mousedown")
        .Select(function(e)
        {
            var offset = $(e.target).offset();
            return { X: e.pageX - offset.left, Y: e.pageY - offset.top }
        })
        .SelectMany(function(offset)
        {
            return O.FromJQueryEvent(doc, "mousemove")
                .TakeUntil(O.FromJQueryEvent(doc, "mouseup"))
                .Select(function(e) { return { X: e.pageX - offset.X, Y: e.pageY - offset.Y }; })
        })
        .Subscribe(function(a) { area.css({ left: a.X, top: a.Y }) });
});

状態管理変数は使いませんし、全て一連のメソッドチェーンだけで完結します。以下解説。

Rx.Observable.FromJQueryEventは、イベントをRxオブジェクトに変換します。これはjQueryの$などと同じものだと思ってください。FromJQueryEventと同様の動作をするものにFromHtmlEventというものがあります。ほとんど同様ですが、jQueryオブジェクトを使う場合はFromJQueryEvent、getElementByIdなどで得られたネイティブの要素を使う場合はFromHtmlEventを使いましょう。基本的には、クロスブラウザ回りの面倒事を任せられるjQueryとの併用がお薦めです。

Rxオブジェクトに変換後は、多数のメソッドをjQueryのようにチェーンさせて記述していきます。どれだけ多数かというと、ここに並べてみます。

Subscribe, Select, Let, MergeObservable, Concat, Merge, Catch, OnErrorResumeNext, Zip, CombineLatest, Switch, TakeUntil, SkipUntil, Scan1, Scan, Finally, Do, Where, Take, GroupBy, TakeWhile, SkipWhile, Skip, SelectMany, TimeInterval, RemoveInterval, Timestamp, RemoveTimestamp, Materialize, Dematerialize, AsObservable, Delay, Throttle, Timeout, Sample, Repeat, Retry, BufferWithTime, BufferWithCount, StartWith, DistinctUntilChanged, Publish, Prune, Replay

何も一気に全部を知る必要はないので、あまり圧倒されずに、少しずつ学んでいければいいかな? 私もちょいちょいとブログ記事で紹介していきたいと思っています(やるやる詐欺ばかりですが……)。そうそう、ソースコードが圧縮されていて実際の名称は不明なのでRxオブジェクトと呼んでますが、それであってるかは今のところ謎です。C#ではIObservableなので、IObservableでいいかな、という気はしますが。

イベント as リスト

もう少しFromJQueryEventの動きを考えますか。イベントが発生すると、後ろのメソッドにイベントオブジェクトが渡されます。再度クリックすると、またイベントが発生しイベントオブジェクトが渡されます。再度(以下略)。つまりは、[event, event, event…]。終りのない配列。無限リスト。まるでイテレータのような……。そう、ObserverパターンとIteratorパターンは同じなのだよ、ナンダッテー!よく分からない?確かに。こういう時は他の人の言葉を借りてしまおう。最近Scalaの入門記事が注目を集めました。「神は言われた。「リストあれ。」」。そうです、イベントもまた、Rxの手にかかればリストになってしまうのです。Rxは関数型言語のリスト操作のようにイベントを高階関数で処理できます。それがもたらす世界、想像するとワクワクしませんか?なお、JavaScriptで配列やDOMに対してリスト操作を行うライブラリとしてlinq.jsというがありますのでよろしくお願いします←宣伝(作ってるの私なので)。

ドラッグアンドドロップの構造

mousedownでイベントが発動しても、本当に必要なイベントはdownじゃなくてmove。なので、downはイベント発動とオフセット算出にだけ使って、実際に後ろに流す情報は別のところから得ます。そこで、mousedownとmousemoveを合流させなければなりません。シーケンス(Rxによりリストのような何かになっているので、Sequenceが言葉として適切な気がします)の結合はMergeやCombineLatest、Zipなど、用途に応じて色々あるのですが、ここは一(mousedown)から多(mousemove)の状態を作ることが可能なSelectManyを使用します。SelectManyに渡す高階関数の戻り値(Rxオブジェクト)が、更に平たくされて後ろのメソッドに渡されていくことになります。

TakeUntilは、「~まで取得する」。引数のイベントが発動されるまでシーケンスを流し、発動されたら一切流さなくなる。つまりFrom(mousemove).TakeUntil(mouseup)は、mouseupされるまでmousemoveイベントを発行するということ。驚くほど簡単にドラッグアンドドロップの構造が記述出来てしまいました。これはヤバい。Rxヤバい。簡潔すぎるだろ常識的に考えて。

Selectは多くの関数型言語やRubyなどで言うところのmapで、要素を変形して返すもの。ここではeventからclientX, clientYだけのオブジェクトを作っています。mapがあるということは、勿論filterもあります(メソッド名はWhere)。この辺はlinq.jsの解説がそのまんま適用出来ます。何故かというと、Observerパターン(RxJS)とIteratorパターン(linq.js)は(以下略)。

Subscribe

シーケンスを変形していったら、最後に登録してやる必要があります。それがSubscribe。Subscribeを呼んで、初めてイベント(mousedownなど)に関連付けられます(addEventListenerです、ようするに)。このSubscribeは感覚的にはforeachのようなもので、無名関数の第一引数に今までに変形させた変数が入っているので、それを取り出して何らかのアクションを取る。今回はstyleを弄って四角形の座標を変更してやりました。

addEventListenerということは、デタッチもあるの?というと、ありますあります。Subscribeの戻り値はvoidではなく、IDisposableオブジェクトというものになっています。この戻り値のIDisposableオブジェクトを取っておけば、デタッチさせたい時にDisposeメソッドを呼んでデタッチさせられます。

Rx.Observable

Rxオブジェクトのメソッド一覧は書きましたが、Rx.ObservableにはFromHogeHoge以外にも色々なメソッドがあるよ。イベントだけじゃなく、あらゆる方向からRxオブジェクトを作り出す驚異のメソッド群はこれだ!

Amb, Catch, Concat, Create, CreateWithDisposable, Defer, Empty, FromArray, FromDOMEvent, FromHtmlEvent, FromIEEvent, FromJQueryEvent, Generate, GenerateWithTime, Interval, Merge, Never, OnErrorResumeNext, Range, Repeat, Return, Start, Throw, Timer, ToAsync, Using, XmlHttpRequest

いっぱいありますねー。名前から想像つくものからつかないものまで。XmlHttpRequestとか興味をひくところです。そう、Rxはイベントだけではなく、非同期通信までリストに変換し統一的な操作を可能にしてしまうわけです。こっちも重要なので、後日サンプル書きます。

結論

jQueryあるからRxJSなんてイラね、というわけじゃあないんですよ!ふたり揃ってプリキュア。最初の方にも書きましたが、jQueryのDOM操作は素晴らしいのでおまかせでいいです。イベントや非同期処理はjQueryだけじゃ足りないところがあります。そこはRxJSで補います。ついでに通常のリスト操作(配列やDOM Elements)は全然足りてません。prototype.jsはあんなにイけてたのに、jQueryになってからリスト処理がシンドいですね。そこはlinq.jsです(宣伝しつこい)。これでもうJavaScriptに死角はなくなった……、勝った、HTML5時代バンザイ!(でも私はC# + Silverlight4に期待をかけるけどね)

参考リンク

Rxチームの一員であるJeffrey van Goghによる、Rxをインストールしたディレクトリに置いてある、TimeFilesサンプルの解説。forループがダサいのでlinq.jsを使って書き直してTwitterに流したんですが、そうしたらJeffrey van Goghに言及してもらった!。これは嬉しい。

Matthew PodwysockiによるRxJSの解説シリーズ。From(mousemove).TakeUntil(mouseup)のネタ元はここだったりして。最高にクール!

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