Windows Phone 7で同期APIを実現するたった つの冴えないやり方

Windows Phone 7が発表されました。中々に素晴らしい仕上がりに見えます。米国では来月発売と非常に順調そうですが、日本では…… ローカライズが非常に難しそうに見えました。発売されること自体は全然疑っていませんが、問題は、米国で達成出来ているクオリティをどこまで落とさず持ってこれるか。日本語フォントや日本語入力、今一つなBing Map、但し日本は除くなZune Pass。本体だけではなく、周辺サービスも持ってきて初めてWindows Phone 7の世界が完成する。ということを考えると、大変難しそう。

その辺はMicrosoft株式会社に頑張ってもらうとして、一開発者的には淡々とアプリ作るだけでする。というわけで、標題のお話。WP7というかSilverlightと、そして例によっていつもの通り、Rxの話です。

問題です。以下のコードの出力結果(Debug.WriteLineの順序)はどうなるでしょうか。

// 何も変哲もないボタンをクリックしたとする
void Button_Click(object sender, RoutedEventArgs e)
{
    Debug.WriteLine("start");
 
    // 10秒以内にレスポンスが来るとする
    var req = WebRequest.Create("http://bing.com/");
    req.BeginGetResponse(ar => Debug.WriteLine("async"), null);
 
    Thread.Sleep(10000); // 10秒待機
    Debug.WriteLine("end");
}

答えは後で。

Dispatcher.BeginInvokeとPriority

Dispatcherとは何ぞやか。について説明するには余白が狭すぎる。ので軽くスルーしてコードを。Dispatcher.BeginInvokeは通常は別スレッドから単発呼び出しが多いですが、UIスレッド上でDispatcher.BeginInvokeを呼ぶとどうなるでしょう?

// (WPF)何も変哲もないボタンをクリックしたとする
void Button_Click(object sender, RoutedEventArgs e)
{
    Debug.WriteLine("start");
 
    Dispatcher.BeginInvoke(new Action(() => Debug.WriteLine("normal1")), DispatcherPriority.Normal);
    Dispatcher.BeginInvoke(new Action(() => Debug.WriteLine("background")), DispatcherPriority.Background);
    Dispatcher.BeginInvoke(new Action(() => Debug.WriteLine("normal2")), DispatcherPriority.Normal);
 
    Debug.WriteLine("end");
}

結果は、start->end->normal1->normal2->backgroundです。なおDispatcherPriorityはWPFでは設定可能ですが、Silverlightでは設定不可で、内部的には全てBackgroundになります。挙動は以下の図のようになっています。

一番上のブロックが現在実行中メソッド。下のがDispatcher。BeginInvokeで実行キューに優先度付きで突っ込まれて、現在実行中のメソッドが終了したら、キューの中のメソッドが順次、優先度順に実行されます。といったイメージ。

問題の答え

冒頭の問題の答えは、WPFではstart->async->endの順。Silverlight(WP7も含む)ではstart->end->asyncの順になります。ええ。WPFとSilverlightで挙動が違うのです!今更何をっていう識者も多そうですが(Silverlightももう4だしねえ)私ははぢめて知りました。はまった。BeginGetResponseはWPFでは(というか普通の.NET環境では)そのまま別スレッド送りで実行されますが、Silverlightでは一旦Dispatcherに突っ込まれた後に実行されるのですねー、といったような雰囲気(なので一つ前でDispatcher.BeginInvokeがどうのという話を挟みました)。

Silverlightでは、BeginGetResponseはすぐには実行されない。それを踏まえて次へ。

非同期 to 同期

非同期を同期に変換してみましょう。Reactive Extensions for .NET (Rx)で。

void Button_Click(object sender, RoutedEventArgs e)
{
    // 非同期を同期に変換!
    var req = WebRequest.Create("http://bing.com/");
    var response = Observable.FromAsyncPattern<WebResponse>(req.BeginGetResponse, req.EndGetResponse).Invoke()
        .First();
    Debug.WriteLine(response.ResponseUri);
}

Rxで非同期を包むと長さ1のReactiveシーケンスとなるので、Firstを使うと同期的に値を取り出せる、という話を前回の記事 Rxを使って非同期プログラミングを簡単に でしました。そして実際、上のコードはWPFでは上手く動きます。きっちりブロックして値を取り出せる。勿論、それならGetResponseを使えよという話ではありますが。

では、Silverlight(勿論WP7でも)では、というと…… 永久フリーズします。理由は、BeginGetResponseはDispatcherに積まれた状態なので、現在実行中のメソッドを抜けない限りは動き出さない。Firstは非同期実行が完了するまでは現在実行中のメソッドで待機し続けるので、結果として、待機しているので実行が始まらない=実行完了は来ない→永遠に待機。になります。

結論としては、UIスレッド上で同期的に待つことは不可能です。代替案としてはThreadPoolで丸々包んでしまうということもなくはない。

void Button_Click(object sender, RoutedEventArgs e)
{
    ThreadPool.QueueUserWorkItem(_ =>
    {
        var req = WebRequest.Create("http://bing.com/");
        var response = Observable.FromAsyncPattern<WebResponse>(req.BeginGetResponse, req.EndGetResponse)
            .Invoke()
            .First();
        Debug.WriteLine(response.ResponseUri);
    });
}

こうすれば、BeginGetResponseが発動するので問題なく待機して値を取り出せます。でも、これじゃあ全然嬉しくもない話で全く意味がない。Rxで包んでいる状態ならば、.Subscribeでいいぢゃん。ということだし。

// 非同期を同期に、そんなことは幻想なのでこう書くのがベストプラクティス
void Button_Click(object sender, RoutedEventArgs e)
{
    var req = WebRequest.Create("http://bing.com/");
    Observable.FromAsyncPattern<WebResponse>(req.BeginGetResponse, req.EndGetResponse)
        .Invoke()
        .Subscribe(res => Debug.WriteLine(res.ResponseUri));
}

素直に、普通にReactive Extensionsを使うのが、一番簡単に書けます。息を吸うように、ごく自然にそこにあるものとしてRxを使おう。

Delegate.BeginInvokeのこと

相違点はまだあります。普通の.NET環境ではDelegateのBeginInvokeで非同期実行できますが、Silverlightにはありません。やってみるとNotSupportedExceptionが出ます。じゃあFuncにラップしてみるとどうだろう?

void Button_Click(object sender, RoutedEventArgs e)
{
    Debug.WriteLine("start");
 
    Action action = () => Debug.WriteLine("action");
    Func<AsyncCallback, object, IAsyncResult> wrappedBeginInvoke = action.BeginInvoke;
    wrappedBeginInvoke.Invoke(ar => Debug.WriteLine("async"), null);
 
    Debug.WriteLine("end");
}

WPFではstart->end->action->async。Silverlightではstart->NotSupportedExceptionの例外。ここまではいいんです。Windows Phone 7でこのコードを試すと、例外出ません。何故か実行出来ます。SilverlightではBeginInvokeは出来ないはずなのに!そして、その実行結果はstart->action->end。つまり、非同期じゃない。BeginInvokeじゃない。Invokeとして実行されてる。意味がさっぱりわかりません。

不思議!不思議すぎたので、MSDNのWindows Phone 7 Forumで聞いてみましたが、良い返答は貰えず。とりあえず、怪しい挙動をしているのは間違いないので、これはやらないほうが無難です。勿論、通常こんなこと書きはしないと思うのですが、RxのFromAsyncPatternをDelegateに対して使おうとするとこうなりますので注意。Delegateの非同期実行したい場合はFromAsyncPetternじゃなくてToAsyncを使いましょう。

void Button_Click(object sender, RoutedEventArgs e)
{
    Debug.WriteLine("start");
 
    // Observable.ToAsync(()=>{})でもいいし、すぐにInvokeするならObservable.Start(()=>{})も有用
    Action action = () => Debug.WriteLine("action");
    action.ToAsync().Invoke().Subscribe(_ => Debug.WriteLine("async"));
 
    Debug.WriteLine("end");
}

こうすることで、Rxは内部でBeginInvokeではなくThreadPoolを使うので、問題は起こらずWPFと同じ結果が得られます。

まとめ

同期的に書くほうが分かりやすいには違いないし、また、非同期が苦痛なのもその通り。でも、非同期を同期に、なんて考えない方がいい。AutoResetEventなどを駆使して擬似的に再現出来たとしても、やっぱ無理ありますし、非同期のメリットを犠牲にしてまでやるものではない。確かに非同期をそのまま扱うのは苦痛だけれど、Rxを使えば緩和される。むしろ慣れれば同期的に書くよりも利点が見えてくるぐらい。無理に同期に変換しようとしないでRxを覚えよう。が、結論です。

でもドキュメント全然ないし日本語の話なんて皆無で難しいって? そうですねえ、そうかもですねえ……。このブログも全然順序立ってなくて、思い立ったところから書いてるだけで分かりづらいことこの上ないし。うむむ……。でも、Rxの機能のうち非同期周りの解説に関してはほとんど出せているはずなので、読みにくい文章ですが、目を通してもらえればと思います。

もしつまづくところがあれば、Twitterで「Reactive Extensions」を投稿文に含めてくれれば、Twitter検索経由で見つけて反応します。(「Rx」だと検索結果が膨大になるので反応出来ません……)。検索を見てるワードとしては、他に「Linq」なども高確率で反応しにいきます←逆に怖いって?すみませんすみません。

「C#」が検索キーワードに使えたらいいんですけどねえ。「Scala」とか「JavaScript」は常時見てるんですが、かなり活況に流れているんですよ。そういうの見てると、Twitter上のC#な話も漏らさず見たい・参加したいと思ってしまうわけで。

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Yoshifumi Kawai
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