Reactive Extensionsを学習するためのリソースまとめ

1年半ほどDevLabsプロジェクトとして動いていたReactive Extensionsですが、ついにDevLabsを卒業し、Data Developer Center入りを果たしました。まずは、おめでとう!そして、これで安心してプロダクトに突っ込む事ができます。どれだけ有望そうに見えても、DevLabsのままではいつ消滅するか分からない。そういう先例(STM.NETがね、この死骸ページの虚しさ)もあった。また、Rxチームの前身はMicrosoft Live LabsでのVoltaというプロジェクトなわけですが、これは打ち切りでした!その魂はRxの可愛い鰻のアイコンで引き継がれ(Voltaからの継続使用)、ついに復活を遂げたという感動ストーリーがあるかないかは、特にない。それはともかくとして、私はこのアイコン好きです。

なお、Data Developer Centerはen-usja-jpの格差が激しいので、日本語情報が充実するかは不透明というか多分しないというか、せめてja-jpからだと辿れないテクノロジが幾つかあるのだけは何とかして欲しい、RxもそうだしStreamInsightなんかも……。

学習リソースまとめ

Data Developer Centerのページが何だかごちゃごちゃしているので、少し情報を整理します。

ここのTutorials & ArticlesにあるCuring the asynchronous blues with the Reactive Extensions。これがハンズオンラボになっていて、基礎からチュートリアル式に触りながら学べるようになっています。まずは、これをこなすとRxではどのようにプログラミングするのか、どのような問題を解決できるのか、というのが見えるはずです。for .NETとfor JavaScriptがありますが、内容は同じです。両方を見ることで、Rxという、Linqという層を設けることで言語を超えた統一的な思考・統一的な記述が可能になっているという世界を垣間見ることができます。

続いて同ページの左下、Documentation HighlightsにあるDesign Guidelines。このドキュメントは非常に重要で、Rxにおける原理原則注意点実装の詳細が書かれているので、最初から読む必要はないのですが、ある程度Rxに慣れ親しんだら絶対に読むべき代物です。日本マイクロソフトは是非これを和訳してください!

RxチームのBart De Smetによるプレゼンテーション。Rxチームもあちこちでプレゼンやっていて、色々なビデオが残っているのですが、これが一番お薦め。導入から深いところまで過不足なく説明されていて大変分かりやすいし、グッとくるかと思われます。また、Channel 9のRxタグには動画がいっぱいあります。新機能を足すたびに動画で説明していたので英語圏のほうでは分かりやすいのだろうけれど、それ以外にとってはむしろ分かりづらいんだよこんちくしょう!を繰り広げてましたので良く分からない機能があったらとりあえず動画見に行くといいのではないかと思われます。

これは、お薦めしません。ほんと最初期に立てられたWikiで、皆が試行錯誤な段階で例が書かれた感じで、どうもわかってない感漂う今一つな例ばかり。いや、そりゃ初期なのでしょうがないのですが、如何せんそれから以後誰も追加も更新もしない寂れた廃墟なので、これ見て学ぼうとするのは少しシンドイ。(私も含めて)お前ら編集しろよって感じなのですが、どうしてこうなった……。

Rxについての情報交換は公式フォーラムで行われています。Rxチームの人も出てきますし、常連みたいな人が何人か張り付いてコードぺたぺた貼ってくれているので、サンプル集的な意味でもお薦め(前述のWikiよりも遥かに!)。何か使い方の分からないメソッドがあれば、検索に入れてみれば、きっと解説とコードが出てくるでしょう。

Windows Phone 7にはRxが標準搭載されていますので、当然MSDNにもリファレンスがあります。WP7の開発環境が日本語化してくれれば、念願のRxでの日本語IntelliSenseが!なのですが、まだなのですよね、残念。ちなみに、このWP7版は少し前のものがベースになっているので、必ずしも現在の最新版と一致するとは限りません。WP7版が出てから追加されたものは入っていないし、中には削られたものも……。なお、リファレンス自体はインストールディレクトリ Progam Files\Microsoft Cloud Programmability\Reactive Extensions にchmで転がってます。

あまりお薦めしません(笑) 初期は「メソッド探訪XX回」というフォーマットでやろうとしていましたが今はそれは放棄して完全に好き放題書いてます。壊滅的に整理されておらず、非常に分かりづらい。日本語でのちょっと突っ込んだ情報はここしかないというのは悲しいことです。一応、幾つか並べてみれば

Reactive Extensions入門 + メソッド早見解説表
linq.js & Reactive Extensions for JavaScript(RxJS)入門
RxとAsync CTPでの非同期のキャンセル・プログレス処理
Reactive Extensionsとエラーハンドリング
Rxを使って非同期プログラミングを簡単に
Reactive Extensionsの非同期周りの解説と自前実装
メソッド探訪第7回:IEnumerable vs IObservable
Rx(Reactive Extensions)を自前簡易再実装する

といったところでしょうか(全然絞れてないですね、あうあう)。ちょっと非同期にお熱だったので、非同期系に偏りがちな、特に近頃は。重要な○○の解説を出してないので早く書きたい!と思っている事項が、まだかなり沢山残っているので、今年も積極的に更新を続けたいと思っています。あとは私の Twitter:@neuecc で小さいコード書いて貼りつけたり、Rx関連な話題が目についたら反応したりはしてます。たまに。答えられることは答えられますが答えられないことは勿論答えられないので、私がダンマリとしてたら、こいつ分かってねーな、ということで、ぐぬぬぬ。もしくは風呂で寝てます。

その他のリソース

Reactive programmingというパラダイムで見ることが出来るので、他の言語での動きから分かることというのも、いっぱいあります。

F#から。この論文の著者のTomas Petricekは非常に有名な方で、そもそもSupervisor: Don Syme, Microsoft Research Cambridgeですしね。146ページとボリューム十分。ですが、私は「読んでません」よ。俺、F#を学んだらこの論文読むんだ……。とか思ってはやンヶ月。ようやく重い腰が上がってF#はぢめました。やってみるとF#は非常に面白く、更に教養として身につけておく、的なわけじゃなく今すぐ普通に実用的なので、実践 F#読んで一緒に学びましょうー。F#お薦め。

F#はファーストクラスイベントとして、デフォルトでフィルタリング程度なら可能になっているしで、むしろネイティブ対応だぜ的な勢いもありますね。少し触った感じだとmapとfilterぐらいなので、あくまで軽く、程度ではあるようですが。あと非同期ワークフローが実に興味深く有益な機能。

非同期ワークフローといったら、こちらも。C# 5.0に入るかも、なAsync機能のCTP。残念ながら英語版VSにしか入らないので簡単に触れはしないのですが……。Rx自体にもこのAsync CTP対応(GetAwaiterの実装)や、System.Linq.AsyncとしてAsyncEnumerableの実装などをしていて、Async CTPとは、切っても切れない密接さを見せているのですが、機能的にやはり被りつつあるので、どう上手く切り分けるのか、というのが難しいところです。Async CTPはもう少し突っつきたいのですが中々時間取れずな今現在。

ScalaでのReactiveの実装になるようです。Wiki -> Design Guidelines in Japanese は実にためになります。作者はC++でのLinq(酷い形容ですがC#erの戯言なので許して!) であるOvenのかた。Enumerable-Observableみたいなことを感じつつそこはしかしC++もScalaも分からないのでもごもご。

概要編のほかEvent編、Behavior編が。Haskellはよくわからなくても雰囲気は分かる(ぉ

こうして俯瞰してみても、Rxは実用に踏み出しているという点で、一歩抜けてるのではないかと思います。

Rxの入手方法・パッケージ・DLL内容について

対応プラットフォームはいっぱいありますが、Get Reactive Extensions for .NETからRx for All Platformsを選択すれば全部インストールされますんで、それでいいと思われます。又はNuGetに対応しているので、それを使うのも良いでしょう。

画像はNuGetに登録されているRxのもの。多すぎである。NuGetでも多すぎて困るのですが、普通にインストールした場合は、やたら小分けされた大量のDLLをインストールしてくるので、何をどう選べばいいのかさっぱり分かりません。というわけで、それの解説を少し。

System.CoreEx // Scheduler,Disposableなどの必須クラス群
System.Observable // Silverlightのみ

NuGetだとRx-Core。System.ObservableはIObserver/IObservableのインターフェイス定義で、.NET4なら標準入りしているので不要ですがSilverlightでは、こちらの参照も必要になります。

System.Reactive // Observable拡張メソッド

NuGetだとRx-Main。Observableの拡張メソッド群が入っているので、CoreExとReactiveがRxを使う際に必須となる参照と考えるといいです。

System.Reactive.ClientProfile // Stream周りをRxで非同期Readする補助拡張メソッド群
System.Reactive.ExtendedProfile // IHttpHandler使ってモニョモニョなサーバー利用での補助拡張メソッド群
System.Reactive.Testing // テストでのモックを作ったりする時に使いたいクラス群

この3つはオプション。ClientProfileはstreamにAsyncRead/AsyncReadLineというのが入っていて、そのまんまな挙動です。ちなみにAsyncReadLineはbyteをそのまんま切り出しているだけ(つまり日本語で使うとぶっ壊れる)のでまるっきり実用になってません。ふざけんな。というわけで使わないの推奨。

ただ、標準のRxだけだと、この辺のReadは自前で書かなければならなくて少々面倒くさいので、こういったあると便利系のものはあったほうがいい。恐らく、今後拡充されてここに追加されていくのではないかと思われます。私もReactive Extensions用のWebRequest拡張メソッドとか書いちゃってますが、標準でそういうの入ってくれれば手間なくて素敵。ExtendedProfileはよくわからないけどClientProfileと同じく作りは適当な気がする。Testingはあとで調べると思って放置中。でも概念は多分有益だと思うので、そのうちしっかり調べておきたい。

System.Interactive // Enumerable拡張メソッド(EnumerableEx)

こちらはRxとは独立していて、IEnumerableへの拡張メソッド群になっています。気の利いたのが色々入っていて便利。linq.jsにもここからパクッた、じゃなくて名前を統一させて入れたのが幾つかあります。あと、みんなが待望していたForEachがRunという名前で入っていますよ!それだけでもはや必須コンポーネントですね!

なお、突然Ixという表記を見たら、こちらのこと(もしくはIEnumerable全体)を指します。Interactive Extensions。用語としては、Pull-Enumerable-Interactive-IxとPush-Observable-Reactive-Rx となっています。紛らわしくよくわからなくなっても泣かない。

System.Linq.Async // AsyncCTP - Task連携

これもRxとは微妙に独立していて、中身はIAsyncEnumerable。AsyncCTPのTaskをLinq的に扱おうとするものです。Taskだと1個しか返せないので複数返せるように、という。私はイマイチこれの必要性が分からなかったりします。ぶっちゃけIObservableで良くて、で、IObservableのほうが色々融通が利くので。なんかもう出来るから作ったし入れたよ、といったRxチームのノリがここから伺えます。フットワーク軽くて、その姿勢は大好きだけど、混乱します。

最後に、Windows Phone 7では標準搭載されていて、System.ObservableとMicrosoft.Phone.Reactiveを参照することで使えるようになります。また、標準搭載とは別に、上記のような最新版も提供されています。標準搭載と最新版の違いですが、安定度は断然標準搭載版です。MSDNにドキュメントがあるのも良い。そして勿論、標準搭載なので配信する際の容量が嵩まない。では最新版のメリットはというと、勿論、機能面では豊富。また、デスクトップ版などとも完全にAPIの互換が取れます。ただ、バグの混入率は残念ながら結構高いので安定性は若干欠けます。

Rxの使える局面って?

ハンズオンラボやセッションのタイトルがCuring the asynchronous bluesであるように、やはり非同期に対しての適用に強い。クラウド時代のデータプログラミングに非同期は避けられない、それを解決するソリューションとしてのRx。しかしC# 5.0には組み込みAsync入っちゃうしRxJSだって、jQueryに1.5から組み込みでDeferredが入るので、将来的には強い特徴にはならないのですが、未来の前に現実。特にC# 5.0なんていつだよっていう。まあ、jQueryのDeferredよりもずっとセンス良いし(よく知らないで言ってる)、C#5.0 async/awaitよりも遥かに柔軟で強力だという印象を私は持っているので、直接競合するからってoutにはならないと思ってます。

非同期じゃなくイベントのほうは、様々な側面を見せるので一概に言うのは難しい。とりあえず時間を扱うテクノロジとしてのRxは、ベストな選択です。もはや生Timerなんて使ってられません。一例を出すと

// FileSystemWatcherのChangedイベントは一度の変更で複数のイベントが発行される面倒な仕様
var watcher = new FileSystemWatcher("C:\\", "test.txt") { EnableRaisingEvents = true };
 
// 1秒以内に連続して発生してきたイベントは無視して通すのは最後一つだけにする
Observable.FromEvent<FileSystemEventHandler, FileSystemEventArgs>(
        h => h.Invoke, h => watcher.Changed += h, h => watcher.Changed -= h)
    .Throttle(TimeSpan.FromSeconds(1)) // Throttleは指定時間、値の通過がなかった場合に最後の一つを通す
    .Subscribe(e => Console.WriteLine(e.EventArgs.FullPath));

FileSystemWatcherはファイルの変更を監視し、変更があった場合にイベントを飛ばしてくれる便利なクラスですが、例えば一度ファイルを保存する(変更がある)だけで、2,3個のイベントが同時に飛んできたりするなど処理が少し面倒だったりします。ググルとみんな困ってるよ。そういう場合にDateTimeを外部変数に保存しておいて比較を取るとかTimerで発火を調整するとか面倒くさいことをしなければなりません、が、RxならThrottleメソッドで一撃。

Rxではイベントの発生が時間軸上に並んでいるので、イベントに対して時間系魔法をかけることが出来ます。Throttle!Sample!Delay!TimeInterval!その他色々。未だかつてないほど時間を扱うのが容易になりました。面倒くさい印象のあったポーリングなども楽勝です。

他にイベントといったらセンサーの感知なども上げられます。Windows Phone 7に標準搭載された理由にもなるかもですが、センサーで飛んでくる大量のイベントのフィルタリング・加工にRxは実に都合が良い。また、物理デバイスがないとテストできない、あってもそもそもテストしにくいセンサー系APIですが、Rxを使うことでイベントのモック生成・差し替えが容易になります。

最後に挙げるイベント系といったら、GUI。ボタンクリックとか。これは、割とダメ。いや、ダメではないのだけど、GUIの基盤であるWPF/Silverlightががっちりとデータバインド中心に組まれているわけで、ここに無理やり割り込んでも、お互いの良さを消してしまう。フレームワークの根幹でサポートしている仕組みにRxは乗り入れられるほどのメリットを提供出来るか?というと、それは苦しいのではないかとも。Rxが標準入りすることで、WPFのフレームワーク根源からのサポートが入れば、また変わってきそう。これは未来の話。素敵な融合を夢みたい。

その他にデータの分配配信とか実行コンテキストの選択とか、メリット・特徴は色々あります。というか、なんでもかんでもが突っ込める基盤になってます。それらが渾然一体となって融合出来るというのがRxの本当の強さなのではないかと思っています。あらゆるソースをOrchestrate and Coordinateする。美しい……。

まとめ

正式になったから、それで何が変わったか、何が変わるかというとまだ不透明ではある。けれど、なにも変わらない気がします、とりあえず当面は。リリースパッケージが分かれるとかいうこともなく、なんか普通にDevLabsから引っ越ししてきました、というだけな雰囲気だし。そして、今まで通りに一月ぐらいの単位で新しいのリリースするサイクルを続けるのではないかなあ。まだ足したりなさそうだし。破壊的変更も、普通にたまにやってくるのではないかなあ。例えばIQbservableなんて、いつ名前が変わってもオカシクない。これは、QueryableObservableの略なのだけど、Observableと対比させるため同程度の長さの名前である必要があって、それでいてQbservableの本質をついた良い代案ってのは、出てこないよねえ。名前は難しい。

正式なテクノロジとして認められた、として、じゃあ今後どうなる?予想でしかないですが、まず.NET 4 SP1に入るか。これは、入らないんじゃないかなあ……。もし入ったとしても、変わらずData Developer Centerのページで最新版の開発と提供が続いていくでしょう。と、現時点でGetAwaiterが入ってたりするなど、C# 5.0 Asyncとの関係性も避けられない話なので、少なくとも.NET 4 SP1に入ったから開発終了には絶対にならないのではない。はず。.NET 5には入るでしょうが。確実に。

個人的にはWP7に搭載されている程度のものは.NET 4 SP1に入って欲しい(WP7のものは結構前のもの、リリース時期考えると当然ですが)ところなのですけれど、WP7のものとシグネチャ合わないのが出てきちゃってるのが、少々難しいかもなー、と、思うところ。一度フレームワーク本体に入れると変更が効かなくなるので、Rxチーム的にはもう少し手元に置いて弄りたいと思ってるような気がします。見ててそう思うというだけで、的外れな可能性はありますよ、あくまで私の予想なので悪しからず。

私としては、これで日本マイクロソフトにも動きが出て翻訳とか出たりしてくれると嬉しいのだけど。Rx Design Guidelinesなどは非常に重要な資料なので……。

ともあれ、使用に当たっての最大のリスク(テクノロジそのものが消滅する)というのがなくなったので、実プロジェクトに突っ込むことも十分検討できる範囲に入ってきました。実際に使ってみた、の記事が読めるようになってくと嬉しいですねえ。私は、ええと、機会があれば……。もうすぐ実際に突っ込める機会があるかもなので、なにか出せればいいか、な。サイの転がり方次第では分からないけれど。

Comment (2)

Bart De Smet : (01/26 19:37)

Thanks for your interest in Rx and for spreading the word on our technologies through your blog!

neuecc : (01/27 02:41)

Thank you!
I love you and your team’s work.
That is fantastic!
and… I expect your “Linq to Anything” vision.

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