Reactive Extensions v1.0安定版リリース

Reactive Extensions v1.0 Stable and v1.1 Experimental available now! ということで、今までも安定版だの正式だの何なり言っていましたが、今回こそ、本当に本当に正式リリース、v1.0だそうです。整理されたドキュメント、多くのチュートリアルビデオ、大幅なパフォーマンス改善、そして、よくテストされた(かどうかは不明)安定版としてのライブラリ本体。全てが整いました。さあ、使いましょう!実際のプロダクトに!

また、NuGetではRx-でStable版を、Rx_experimental-で実験版を、他にIx_experimental-でIxをインストールすることが可能です。

Ix復活

Ix(Interactive Extensions、Reactiveの反対ということでEnumerableEx、Linq to Objectsを拡張する拡張メソッド群)が復活しました。復活前に、今後についての意見を募集していたのですが、素敵なことに私の意見が全部反映されていました!XxxEnumerableはIntelliSenseの邪魔だから廃止してね、とかForEachにはindex付きのオーバーロード入れてよ、とかTreeを走査するメソッド入れてよ、とか。これは嬉しい。いやあ、やっぱり言っておくものですね。

そんなわけで、もうForEachを自作する必要はありません:)

標準クエリ演算子で何が「出来ない」のかを知っておくことは大切です。標準では複数回列挙なしで前後の値を使うことは出来ないし、再帰的に辿るような、複数段のSelectManyも出来ない。MaxByなどキーを使った最大値の取得もない。

Ixは、そこを補完してくれます。

Expand

Ixの中から、Expandを紹介します。なお、Rx(Observable)にはExperimental Releaseのほうにはあるのですが、まだStableには入っていません。

これは何かというと幅優先探索でツリーを解きほぐします。イミワカリマセンネ。ええと、ツリー状のオブジェクトを辿る場合は、通常は再帰を使って書くと思います。でも、そうして再帰で辿るのって、各枝の値が欲しいわけなんですよね?もしそうなら、ツリーは一直線上に出来る。IEnumerable<T>に出来る。LINQが適用できる。

ええ。熟練した C# 使いは再帰を書かないのです。で、ツリーです。ツリーを辿るのは頻出の再帰構造でパターン化できて、うんたらかんたら。ああ、もう!与えられた木から,子→親への対応を作る,を C# で - NyaRuRuの日記を見るといいです、それで全部解決です!

ExpandはBreadthFirstにあたります。DepthFirstはないの?というと、今のところないですねー。ないものはないです、しょうがない。それはさておき、このツリー的なものを辿るのというのは割とあるシチュエーションで、そしてExpandというメソッドは実に強力なので、是非使い方をマスターして欲しい。ので、例を出します。例えばWinFormsのコントロール。

Panelの下にButtonや、子Panelが並んでいます。さて、この中から全てのButtonを取り出したいのですが、どうしましょうか?予め配列にButtonを持っておく、のもまあ答えですが、ルート階層から辿るようにしましょう。Formに並ぶコントロールは、階層に別れたツリー構造をしています。Expandを使ってみましょう。

Expandはセレクターの結果がEmptyになるまで、辿り続けます。辿る順番は階層順(幅優先)。今回はContorolsを辿って全てのControlを列挙、Buttonが欲しいのでOfTypeでフィルタリング。というわけです。WPFやSilverlightでも、同様に辿ることが出来ます(ちょっとWPFのコントロール階層が面倒くさくて、コードがゴチャゴチャするので、今回はWinFormsを例とさせていただきました)

こういった走査メソッドはlinq.jsにもあります(CascadeBreadthFirst、メソッド名のとおり、NyaRuRuさんの作成されたAchiralから大きな影響を受けています)。JavaScriptの場合、ツリーの代表的なものはDOMです、というわけで勿論DOMに適用できるのですが、DOMの列挙はjQueryでやったほうがいいですよー、なので、JSONやオブジェクト(これもまたツリーになっている)の走査に使うのがいいかもしれません。何にせよ、使いどころというのは存外あるものです。

気になった点

そんな素敵なIxですが、触っていて幾つか気になった点があったので、またForumに投げておきました。リクエストが反映されたことで、調子に乗って味を占めているのかもしれません。ではなくて、フィードバックは積極的に出してあげたほうがいいでしょう常識的に考えて。英語?全部機械翻訳です、はは、まあ、コードがあれば伝わるはず。伝わりました。返答が15分で来た。

まず、Scanの挙動。seedなしの場合に、Rxは最初の値も列挙しますが、Ixは最初の値をスルーするという、挙動の違い。で、これ、最初の値がスルーされるのは都合が悪いので(スルーしたきゃあSkip(1)すればいい)、修正かなあ、と思います。返答では、この点については何も言ってませんでしたが。

Scanにはもう一つ、seed有りの際に、Rx, Ixともにseedをスルーしますが、F#などはseedも列挙します。これは以前はScan0というseed含めて列挙する別のメソッドがあった(WP7版にはある)のですが、今はScan0は廃止されたので、それならScanの挙動をseed込みでの列挙に変更すべき。と、思ったのですが、返答はStartWith(seed)を使えばいいとのこと。それでも確かにいいのですが、基本seed有りにしてseed飛ばしたい時はSkip(1)のほうが使いやすいと思うのだけど。まあ、これはWP7版との互換性の問題もありますし、そもそもRxはStableと言った以上、もう挙動は変えられないので、しょうがないところかもしれません。

他にはRepeat拡張メソッド(無限リピートする)のソースがEmptyの場合の挙動。例えば Range(1,1).Repeat().Take(3) と1,1,1になるわけですが、 Empty().Repeat().Take(3) の結果はどうでしょう?答えは、無限ループを彷徨って止まらなくなります。Emptyに対するRepeatをどう解釈するか、は正直微妙なところですけれど、元ソースが空だと死ぬというのは、結構リスキーなのではないかな、と考えてしまうのです。また、Takeをつけるのは止まることを期待するという点もあるわけですが、この場合はTakeをつけようが何しようが無駄、というのも怖い。Rxチームからの回答は、この挙動は仕様とのことでした。

最後にちょっとリクエストしてみた。今回のIxではDistinctにオーバーロードが足されています。通常だとIEqualityComparer<T>というダルいものをクラス定義して(ここが最悪!)渡さなければいけないのですが、ラムダ式でキーを指定するだけで済みます。言うならばDistinctByといったところ。これは、実に大変有益です。このオーバーロードは、AnonymousComparerという私が以前に作ったものにも載っているのですが(ちなみに拡張メソッドがかち合ってしまうため、Ixと同時使用は不可能になってしまった!まあ、.csファイル一個のライブラリなので、かち合う部分はコメントアウトすればいいのですが)、大変重宝しています。しょっちゅう使ってます。特にExceptとかで多用しているんですが……、今回IxではDistinctにしかオーバーロード足されていません。他の集合系メソッドであるIntersect, Except, Unionでも使えると便利なのになー、って思ってしまうのです。なのでリクエストしておきました。回答は、考えておく、とのことなのでもしかしたら次のバージョンでは乗っかっているかもしれません。

日本語だと言えるけれど、バッサリ切って機械翻訳した英語だと伝えたいニュアンスは吹っ飛んでしまうなあ、ううみぅ。必ずしもコードがあれば伝えられる、わけでもないか、当たり前だけど。

QueryableEx(笑)

ネタ。NuGetではIx_Experimental-Providerで入るんですが、まあ、ネタ。中身はEnumerableExのIQueryable版です。何がネタなのかというと、IQueryableはそれだけでは何の意味もなくて、解釈するエンジン(Linq to SqlなりLinq to Twitterなり)が大事なわけです。そうでなければ、not supportedをぶん投げるだけです。さて、そして、標準クエリ演算子ですらnot supported率が少なくないのに、QueryableExに対応するクエリプロバイダ……。ありえない、です。

そんなわけで、使う機会はないでしょう。んまあ、気合でQueryableExすらもフルサポートするクエリプロバイダを自作すれば、活用出来ますが、やはりそんな機会はないでしょう。

RxJSは?

ドキュメント書いたりとか、QueryableEx作ったり(笑)とか、色々忙しかったのでしょふ。今回「も」全く音沙汰なしですが、次こそは更新されるんじゃないですかねー、分かりませんけど。jQueryにはDeferred乗りましたが、アレは正直かなり使いづらいのでその点でも私はRxJSにしたいなあ。それと、MS支援でのNode.jsのWindows対応も発表されましたし、JavaScriptのAsyncを何とかするためのRx、はかなり価値があると思うので、もう少し頑張って欲しいな、と思います。

まとめ

しっかりとMSDN入りしている、ドキュメントもある、正式にv1 Stableと告知されている、など、もう採用できない理由はなくなりました。日本語リソースはないですが、それは気合で乗り切ればいいぢゃない(とか言ってるうちはダメなのでしょうがー)。

Jesse Liberty(オライリーから出ているプログラミングC#の著者)による解説本も今秋に出るようだし、確実に、順調にメインストリームに乗るテクノロジとしての道を歩んでいますので、安心して追えるのではないかと思います。

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Yoshifumi Kawai
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