実践 F# 関数型プログラミング入門

共著者の一人であるいげ太さんから献本のお誘いを受け、実践F#を献本頂きました。発売前に頂いたのですが、もう発売日をとっくに過ぎている事実!ど、同時期に書評が並ぶよりもずらしたほうがいいから、分散したんだよ(違います単純に遅れただけです、げふんげふん)

NuGetの辺りでも出しましたが、F#スクリプトは活用し始めています。いいですね、F#。普通に実用に投下できてしまいます、今すぐで、C#とかち合わない領域で。勿論、それだけで留めておくのはモッタイナイところですが、とりあえずの一歩として。実用で使いながら徐々に適用領域を増やせるという、なだらかな学習曲線を描けるって最高ぢゃないですか。

F#を学ぶ動機

最近流行りだから教養的に覚えておきたいとか、イベントがファーストクラスとか非同期ワークフローが良さそうなので知っておきたいとか、私はそんな動機ドリブンのつもりでしたが、そういう動機だと実に弱いんですね!そんな動機から発したもので完走出来たものは今まで一つもありません(おっと、積み本の山が……)。もっと具体的に甘受できる現金なメリットがないと駄目なんだ。そんな情けない人間は私だけではない、はず、はず。

というわけで、実際、動機付けが一番難しいのではないかと思います、「実践」するには。F#の場合「それC#で」という誘惑から逃れるのは難しく、正面から向かわないとでしょう。この図式と対比させられるJava-Scala間では、「それJavaで」とは口が裂けても言えなくて(Java……ダメな子)、学ぶことがそのままJVMの資産を活かしてアプリケーションを書けるというモチベーションに繋がりますが、C#は割とよく出来る子だから。そんなわけかないかですが、本書では、冒頭1章でF#手厚く説明されています。言語の歴史を振り返って、パラダイムを見て、F#とはどういう流れから生まれてきた言語なのか。丁寧だとは思います。

並列計算。マルチパラダイム。うーん、それだけだと請求力に欠けるよね、何故ならF#が関数型ベースのマルチパラダイム言語であるように、C#はオブジェクト指向型ベースのマルチパラダイム言語だから。

などとやらしくgdgdとしててもまあ何も始まらない。いいからコード書こうぜ!といった流れで2章で環境導入の解説(この解説は非常に役立ちでした、F# Interactiveのディレクティブ一覧や、SOURCE_DIRECTORYでパスが取れるとか、F#のソースコードの所在とか)で、あとは書く!と。なんとも雑念に満ちたまま読み始めたわけですが、読み始めるとグイグイ引きこまれました。なんというか、学ぶのに楽しい言語なんですよね、F#。

それと、Visual Studioに統合されたF# Interactiveがとんでもなく便利で。こいつは凄い。私、今までREPLって別にどうでもいいものと思っていたのですよ。コマンドプロンプトみたいな画面で一行一行打っていくの。REPLは動作が確認しやすくてイイとかいう話を耳にしては、なにそれ、そもそもメチャクチャ打ちづらいぢゃん、イラネーヨって。でもVSに統合されたF# Interactiveは、IDEのエディタで書くこと(シンタックスハイライト, 補完, リアルタイムエラー通知)とREPLの軽快さが合体していて、最強すぎる。しかもその軽快さで書いたコードはスクリプトとして単独ファイルで実行可能、だと……!F#スクリプト(fsx)素晴らしい。C#で心の底から欲しいと思っていたものが、ここにあったんだ……!

と、読み始めてたら、普通に楽しい言語だし、並列や言語解析といった大変なところに入らなくても実用的だしで、かなりはまってます。F#いいよF#。始める前に考えてた動機だとかなんて幻でしかなく、始めたら自然に心の奥から沸き上がってくるものこそ継続されるものだと、何だか感じ入ってしまったり。

パイプライン演算子

F#といったらパイプライン演算子。パイプラインは文化。と、いうわけかで、実際、私がよく目にしているF#のコードというのは基本|>で繋ぐ、という形であり、それが実にイイなー。などという憧憬はあるのでF#を書くとなったらとりあえずまずはパイプライン演算子の学習から入ったりなどしたりする。

このパイプライン演算子、書くだけならスッと頭に入るけれど、どうしてそう動くのかが今一つしっくりこなかった、こともありました。関数の定義自体は物凄くシンプルでたった一行で。

// |>は中置換なのとinlineなので正確には一緒ではないですが、その辺は本を参照ください!
let pipe x f = f x

おー、すんごくシンプル。シンプルすぎて逆にさっぱり分からない。型も良くわからない。困ったときはじっくり人間型推論に取り組んでみますと、まず、変数名はpipeであり、二引数を持つから関数。

pipe : x? -> f? -> return?

まだ型は分からないので?としておきます。右辺を見るとf x。つまりfは一引数を持つので関数。

x? -> (f_arg? -> f_ret?) -> return?

fの第一引数はxの型であり、fの戻り値が関数全体の戻り値の型となるので

x? -> (x? -> return?) -> return?

これ以上は型を当てはめることが出来ず、また、特に矛盾なくジェネリクスで構成できそうなので

'a -> ('a -> 'b) -> 'b

となる(’aがC#でいう<T>みたいなものということで)。なるるほど、あまりに短いスパッとした定義なので面食らいますが、分かってしまえばその短さ故に、これしかないかしらん、という当たり前のものとして頭に入る、といいんですがそこまではいきませんが、まあ使うときは感覚的にこう書けるー、程度でいいので大丈夫だ問題ない。

このパイプライン演算子をC#で定義すると

public static TR Pipe<T, TR>(this T obj, Func<T, TR> func)
{
    return func(obj);
}

比較するとちょっと冗長すぎはします。とはいえ、この拡張メソッドは、これはこれでかなり有益で、例えばEncodingのGetBytesなどを流しこんだりがスムーズに出来ます。例えばbyte[]の辺りは変換後に別の関数を実行して更に別の、という形で入れ子になりがちで、かといって変数名を付ける必要性も薄くて今一つ綺麗に書けなくて困るところなのですが、パイプライン演算子(モドき)さえあれば、

// ハッシュ値計算
var md5 = "hogehogehugahuga"
    .Pipe(Encoding.UTF8.GetBytes)
    .Pipe(MD5.Create().ComputeHash)
    .Pipe(BitConverter.ToString);
 
// B6-06-FC-CF-DC-99-6D-55-95-B8-B6-75-DB-EE-C8-AE
Console.WriteLine(md5); // Pipe(Console.WriteLine)でもいいですね

気持ちよく、また入れ子がないため分かりやすく書けます。そのためC#でも最近は結構使ってます。ただ、Tへの拡張メソッドという影響範囲の大きさは、相当な背徳を背負います。というかまあ、共同作業だと、使えないですね、やり過ぎ度が高くなりすぎてしまって。パイプはC#のカルチャーでは、ない。うぐぐ。F#なら

"hogehogehugahuga"
|> Encoding.UTF8.GetBytes
|> MD5.Create().ComputeHash
|> BitConverter.ToString
|> printfn "%s"

このようになりますね。「|>」という記号選びが実に絶妙。ちゃんと視覚的に意味の通じる記号となっているし、縦に並べた際の見た目が美しいのが素敵。美しいは分かりやすいに繋がる。

"hogehogehugahuga"
|> (Encoding.UTF8.GetBytes >> MD5.Create().ComputeHash >> BitConverter.ToString)
|> printfn "%s"

翌々眺めると、関数が並んでるなら合成(>>演算子)も有りですね!びゅーてぃほー。

LINQ

関数型言語といったら高階関数でもりもりコレクション処理であり、そしてそれはLinq to Objectsであり。F#ではSeq関数群をパイプライン演算子を使って組み上げていきます。

[10; 15; 30; 45;]
|> Seq.filter (fun x -> x % 2 = 0)
|> Seq.map (fun x -> x * x)
|> Seq.iter (printfn "%i")

filterはWhere、mapはSelect、iterは(Linq標準演算子にないけど)ForEachといったところでしょうか。

new[] { 10, 15, 30, 45 }
    .Where(x => x % 2 == 0)
    .Select(x => x * x)
    .ForEach(Console.WriteLine); // 自前で拡張メソッド定義して用意する

比べると、|>はドットのような、メソッドチェーンのような位置付けで対比させられようです。違いは、パイプライン演算子のほうが自由。例えば、拡張メソッドとして事前にかっきりと定義しなくてもチェーン出来る。だから、F#にSeq.iterなどがもしなかったとしても、

[10; 15; 30; 45;]
|> (fun xs -> seq {for x in xs do if x % 2 = 0 then yield x * x })
|> (fun xs -> for x in xs do printfn "%i" x)

その場でサクサクッと書いたものを繋げられたり、yieldもその場で書けたり(まあこれは内包表記に近くC#だと別にクエリ式でもいいし、といった感じで意味はあまりないですが)実に素敵。しかし、自由には代償が必要で。何かといえば、補完に若干弱い。シーケンスの連鎖では、基本的には次に繰り出したいメソッドはSeqなわけで、一々Seq.などと打つまでもなくドットだけでIntelliSenseをポップアップさせて繋げていくほうが楽だし、ラムダ式の記法に関してもfunキーワードが不要な分スッキリする。

この辺は良し悪しではなくカルチャーの違いというか立ち位置の差というか。C#のほうがオブジェクト指向ライクなシンタックスになるし、F#のほうが関数型ライクなシンタックスだという。同じ処理を同じようにマルチパラダイムとして消化していても、優劣じゃない差異ってのがある。これは、私は面白いところだなーと思っていて。どちらのやり方も味わい深い。

最後に

C#単独で見た時よりも.NETの世界が更に広く見えるようになったと思います。あ、こんな世界は広かったんだって。今後は、ぽちぽちとF# Scriptを書きつつ、FParsecにも手を出したいなあといったところですね。

大して書けはしませんが、それなりに書き始めて使い出せている、歩き始められているのは間違いなく本書のお陰です。「こう書くと良いんだよ」という、誘導がうまい感じなのでするっと入れました。どうしてもC#風に考えてしまって、それがF#にそぐわなくてうまくいかなくて躓いたりするわけですが、そこで、ここはこうだよ、って教えてくれるので。ちょっとした疑問、何でオーバーロードで作らないの?とかの答えは、載っています。

それと最後にクドいけれど、Visual Studio統合のF# Interactiveは本当に凄い。C# 5.0のCompiler as a ServiceはこれをC#にも持ってきてくれることになる、のかなあ。

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