Linq to ObjectsとLinq to Xmlを.NET 2.0環境で使う方法

LinqのないC#なんて信じられない。カレールゥのないカレーライスみたいなものです。しかし.NET Framework 2.0ときたら……。幸いなことに、開発はVisual Studio 2008以降で、ターゲットフレームワークを2.0に、とすることでvarやラムダ式は使うことが可能です。拡張メソッドも小細工をすることで利用可能になります。といったことは、C# 3.0 による .NET 2.0 アプリケーション開発 - XNA で LINQ を使おう - NyaRuRuの日記に書いてありますねん。あと足りないのはLinqを実現するEnumerableクラス。その辺のことはNyaRuRuさんの日記の追記のほうにもありますが、LINQBridgeを使うことで拡張メソッドのための小細工なども含めて、全部面倒見てくれます。つまり、Linq to Objectsを.NET 2.0で使いたければLINQBridge使えばいい。以上。

というだけで終わるのもアレなので、Linq to Objectsが使えるなら、Linq to Xmlも使いたいよね?Linq to Xmlの強力さを一度味わったら二度とXmlDocumentも使いたくないし生のXmlReader/Writerも使いたくないし。でも残念なことにLINQBridgeはto Objectsだけ。となれば自前再実装、は無理なので、そこは.NET Frameworkのオープンソース実装のMonoからソースコードをお借りすればいいんじゃなイカ?

Monoのソースコードはmono/mono - GitHubで管理されています。私はGitじゃなくてMercurial派なのでGitは入れてないのでPullは出来ない、ので、普通にDownloadsからzipで落としました。クラスライブラリはmcs\class以下にあります。まずはEnumerableから行きましょう。

Linq to Objects

新規にクラスライブラリプロジェクトを立てて(プロジェクト名は何が良いでしょうかねえ、私はMono.Linqとしました)、ターゲットフレームワークを2.0に変更。そしてSystem.Core/System.Linqをフォルダごとドラッグアンドドロップでソリューションエクスプローラに突っ込む。そしてコンパイル!

ふむ。華麗に673件のエラーが出てますね。どうやらExpressionsがないそうで。ふーむ、つまりQueryable関連ですねえ。Enumerableだけだと関係ないので削除してもいいんですが、せっかくなのでIQueryableも使えるようにしましょう!System.Core/System.Linq.ExpressionsもEnumerableと同じようにフォルダごとコピー。更にコンパイル!

するとまだまだ346件エラー。FuncがないとかExtensionAttributeがないとか。.NET 3.0で追加された拡張メソッド用の属性とかFuncがないわけですね。というわけで、それらも持ってきてやります。ExtensionAttributeはmcs/class/System.Core/System.Runtime.CompilerServicesにあります。Enumerableだけの場合はExtensionAttributeだけでいいのですが、Queryableも使う場合は他のクラスも必要になるので、ここもフォルダごとコピーしましょう。

もう一つの、FuncとActionはSystem.Core/SystemにFuncs.csとActions.csとして定義されているので、これらも持ってきます。なお、FuncとActionは#ifディレクティブにより.NET4以下の場合は4引数までのものしか使えないようになっていますが、.NET4からの16引数までのものも使いたければ、#ifディレクティブを削除すればOK。

これでコンパイルするとエラーはたった4つになります!ってまだエラーあるんですか、あるんですねえ。HashSetがないとか。HashSetで、ああ、集合演算系が使ってるもんねえ、とティンと来たら話は早い。こいつはSystem.Core/System.Collections.Generic/HashSet.csにあります。みんなSystem.Core下にあるので捜すの楽でいいですね。

コンパイルしたらエラーが増えた!HashSet.csのエラーですね。CollectionDebuggerViewとMonoTODOという属性が無いそうだ。よくは分かりませんが、名前からして大したことはなさそうだしたったの5つなので、削除してしまっても問題なく動きます。ので削除してしまいましょう。と言いたいんですが、せっかくなのでこの二つの属性も拾ってきます。この二つはSystem.Coreにはないし、正直見たこともない属性なので何処にあるのか検討付きません。というわけで、まあ検索すれば一発です。

System.Data.Linq/src/DbLinq/MonoTODOAttribute.cs、って随分変なとこにありますね、とにかくこれと、corlib/System.Collections.Generic/CollectionDebuggerView.csを持ってくる。

これで完成。コンパイル通る。動く。ターゲットフレームワーク2.0でもLinq!何も問題もなくLinq!ラムダもvarも拡張メソッドもある!うー、わっほい!C# 3.0で.NET Framework 2.0という奇妙な感覚が非常に素敵です。

Linq to Xml

ではLinq to Xmlも用意しましょう。といっても、やることは同じようにmonoのコードから拝借するだけです。mcs/class/System.Xml.Linq下にあるSystem.Xml.Linq, System.Xml.Schema, System.Xml.XPathをフォルダごとコピー。そしてコンパイルすると!例によってエラー。

XNameが見つからないそうで。んー、あれ、XNameは普通にLinq to Xmlの一部では?と、いうわけでSystem.Xml.Linq/XName.csを見に行くと、あー、#if NET_2_0で.NET2.0環境下では全部消えてる!しょうがないので、ここではソースコードを直に編集して#ifディレクトブを除去しちゃいます。

コンパイルは通りましたが警告ががが。CLSCompliantがついてないってさ。というわけで、Properties/AssemblyInfo.csにCLSCompliantを付けてやります。

[assembly: System.CLSCompliant(true)]

これで完成。Linq to Xmlが使えるようになりました!マジで!マジで。

ライセンス

ライセンスは大事。FAQ: Licensing - Monoで確認するところ、クラスライブラリはMIT X11 Licenseになるようです。かなり緩めのライセンスなので比較的自由に扱えるのではないかと思いますが、詳細はFAQならびにMIT X11 Licenseの条項を個々人でご確認ください。

まとめ

Linqがあれば.NET 2.0でも大丈夫。もう何も怖くない。まあ、実際.NET 2.0のプロジェクトを今からやるかといえば、これは最終手段であって、まずやることは全力で反対して.NET 4を採用させることでしょう。既存のプロジェクトに対する改修でLinqを突っ込むのは、うーん、そんなこと許されるんですか!許されるなら平気でやります!大抵は許されない気がしますが!

さて、.NET 4の人でもこれを用意する利点はあります。学習用に。シームレスにLinqの中へデバッグ実行で突入出来ます。挙動の理解にこれより最適なものはないでしょう。ソースコードを眺めるもよし、ですしね。それと、これを機にMonoに触れる、機会はWindowsな私だとあまりないのですが、ソースコードに触れてみるのも結構幸せ感です。mono独自のクラス(Mono.Xxx)も色々あって面白そう。

余談ですが、Windows Phone 7やSilverlightであのクラスがない!という状況もMonoの手を借りることで何とかなるケースも。(何とかならないケースは、依存がいっぱいで沢山ソースを持ってこなければならない場合。さすがにそう大量となるとどうかな、と)

.NETコードへデバッグ実行でステップインする方法

デバッグ実行といえば、Microsoftもソースコードを公開しています。.NET Framework Librariesで公開されてます。.NET 4をDownloadすれば、その中にあります。やたら階層が深くて迷ってしまいますが、EnumerableとQueryableは Source.Net\4.0\DEVDIV_TFS\Dev10\Releases\RTMRel\ndp\fx\src\Core\System\Linq にあります。Symbolをモニョッとすれば、Visual Studio内でもステップインでデバッグ出来ますねえ。というわけで、その解説もついでなので。

まず、オプション->デバッグ->全般で「マイコードのみ設定を有効にする」のチェックを外します。そして、「ソースサーバーサポートを有効にする」のチェックを入れます。この二つだけ(多分)。ちなみに、「.NET Frameworkソースのステッピングを有効にする」というなんともそれっぽいオプションは罠なので無視しておきましょう。

あとはデバッグ->シンボルでダウンロードした先のフォルダを指定すればOK。私はZ:\RefSrc4\Symbolsになってます。これで、F11でめくるめく.NET Frameworkの無限世界にステップインで帰ってこれなくなります!やり過ぎると普通に鬱陶しくなるので、その他のオプション類とかで適度に抑制しながらやりませう。

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Yoshifumi Kawai

Cysharp, Inc
CEO/CTO

Microsoft MVP for Developer Technologies(C#)
April 2011
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