RxJS用IntelliSense生成プログラム(と、VisualStudioのJavaScript用vsdocの書き方)

先日、Reactive Extensions for JavaScript(RxJS)の記事を書いたわけですが、触っていて困るのは、どのメソッドが使えるの?ということ。リファレンスもない中で、C#版の記憶を頼りに手打ちでメソッド名を探るなんて、無理。ましてやそんな状況じゃあ人に薦められないよ!というわけで、必要なのはIntelliSense(入力補完)です。rx.jsはある。rx-vsdoc.jsはない。ないものは、作ればいいぢゃない。そこで諦めてメソッド全部暗記してやるぜ、とか思うのはどうかしてる。諦めたら試合終了ですよ。楽するために手間を掛けるのです<プログラマの三大美徳。というわけで、作りました。

vsdocファイルをそのまま配布するのはライセンスの問題が出そうなので、生成プログラムを配布します。手作業じゃなく自動生成で作ったので(面倒くさくて手作業なんてやってられるか!)。Rxをインストールしたフォルダ(デフォルトだとProgramFiles\Microsoft Reactive Extensions)のScriptSharpフォルダの下のRxJS.dllとRxJS.xmlを、生成プログラムと同じ階層に置いて実行すると、rx-vsdoc.jsが生成されます。

利用するにはvsdoc対応パッチをあてたVisualStudio 2008 SP1(VS2010はパッチをあてなくても対応しています)を用意して、rx.jsと同じ階層に置くだけです。HTMLで使う場合はscript src=”rx.js”で読み込むだけ、独立したjsファイルで補完を使う場合は、行頭に/// <reference path=”rx.js” />と記述すれば補完が読み込まれます。この辺は、以前に最もタメになる「初心者用言語」はVisualStudio(言語?)という記事を書いたときに補完愛してる愛してる愛してると連呼しながら解説してました。jQueryのドットで補完効かせながらのメソッドチェーンは気持ちイイんだって!

折角作ったので海外の人にも利用してもらおうと、また、標準でvsdocも同梱して欲しいと訴えるためにもとRxの公式フォーラムでスレ立てたけど、奇怪英語(機械翻訳英語)が恥ずかしいです……。ニュアンスをミジンコほどにも伝えられた気がしません。英語読めない書けないプログラマなんて小学生までだよねー、とかいう自己啓発系ブログ記事は山のようにあるわけですが、ふん、どうせ英語読めませんよ書けませんよ、ぐぐる先生による機械翻訳さえ超進化してくれれば小学生でも生きていけるもん!(ちなみに私はヤフー翻訳派です)

MIX10の発表によるとMicrosoftはAjax関連はjQueryに一本化する、ということで、C#erもますますJavaScriptを書かなければならないシーンは増えていきそうなので、せっかくなのでJavaScript用のvsdocの書き方を解説します。ついでに、LinqまみれなRxVSDocGeneratorのコードの解説も若干します。Mono.Cecil.dll使ってたりするんですよー(モジュールの参照用にしか使っていないので些かオーバースペック)。

C#と比較するJavaScriptの構造

JavaScriptは割とヒネクレた書き方が幾らでも出来るわけですが、VisualStudioの入力補完は、素の状態だと素直に書かないとついてきてくれません。というわけで素直に書きましょう。素直に書けば素直なIntelliSenseが手に入ります。以下、10秒でわかるC#とJavaScriptとの構造比較。

// 名前空間、もしくは静的クラス
Rx = {}
Rx.Disposable = {}
// クラス(コンストラクタ)
Rx.Observable = function(){ }
// 継承
Rx.AsyncSubject.prototype = new Rx.Observable;
// 静的フィールド
Rx.Disposable.Empty = null;
// インスタンスフィールド
Rx.GroupedObservable.prototype.Key = null;
// 静的メソッド
Rx.Observable.Range = function(start, count, scheduler){ }
// インスタンスメソッド
Rx.Observable.prototype.Select = function(selector){ }

ヒネクレたことさえしなければ、JavaScriptはシンプルです。オブジェクトとファンクションしか存在しない。シンプルさ故の制限を回避するために、また、幾らでも回避可能なためバッドノウハウのようなヒネクレた手段が大量に溢れていて、シンプルさとは無縁の奇怪な代物と成り果てていますが(JSはシンプルだよ、初心者にお薦め!というそばからクロージャがどうのapplyがどうのと言うのはどうなのよ、勿論、その柔軟さもまたJSの魅力の一つだとは思いますが、それをシンプルとは言わない)、素直に見れば、シンプルです。

そしてまあ、C#と割と似てます。構文似てるし。単一継承だし。prototypeに後からメソッドを足せるのは拡張メソッドのよう。違いは、privateはないしプロパティはないしインターフェイスはないしオーバーロードもない(但し引数は省略可能)、いつでも簡単に全てが変更可能(不注意に扱えばすぐ構造をぶっ壊せる←だからライブラリの衝突の問題がある)。といった問題は、若干ヒネクレればある程度は回避可能です、privateとか。でも、素直に書いた方が良いと思います。JavaScriptにprivateはない。と、割り切ってしまうと非常に楽になれます。良いか悪いかはともかく。

ただ、素直に書こうと、素のJavaScriptでは、補完は簡単に限界がきます。例えば以下のコード。

var func = function(bool) {
    return (bool) ? "string" : [4, 5, 2, 3, 1];
}
 
var b = Math.random() < 0.5; // true or false
func(b).toUpperCase();
func(b).sort(); // どちらかで必ずエラー

引数の型が自由なら、戻り値の型もまた自由。じゃあどうするの?というと、どうにもなりません。戻り値の型はなるべく統一しましょう、IntelliSenseに優しくするために。これもまた素直の一つでしょうか、さてはて。

vsdoc.js入門

素直に素直に、と言ったところで何処かで破綻する。だいたい、JavaScriptの言語としての柔軟さを生かさないでどうする!という話は尤もなこと。そこで、VisualStudioはJavaScriptの入力補完に気の利いた仕組みを用意しています。ファイル名-vsdoc.jsが同階層にある場合、vsdoc.jsの構造を利用して入力補完を行います。なので、オリジナルに手を加える事なく補完を利用することが出来ますし、また、オリジナルが補完生成し辛い構造をしていても問題はありません。最終的にユーザーが利用するPublicの構造というのは、上で書いた素直なJavaScriptで再現出来るわけなので、それで構築すればいいだけです。勿論、別箇に構造を作成するというのは手間が増えるので、可能な限りは素直な構造にしておいたほうが無難です。

「IntelliSenseに候補が出ないものは存在しないに等しい」。これは.NETのクラスライブラリ設計という本に書かれている言葉なのですが(神本なので未読の人は絶対購入しましょう)、候補を出しさえしなければ、利用者にとって存在しないようなものに見えます。実際はpublicであっても、補完候補から削ってしまえばprivateに見える。擬似的なprivateの表現としては、中々スマートではないですか?

そんなvsdocですが、ちゃんとしたドキュメントが今ひとつ見あたらないので、jQuery用のvsdocを参考にすると良いでしょう。色々な属性が用意されているようですが、実際の入力補完に利用されるものは少ししかありません。optional属性なんて、オーバーロード的なものの表現に使えるのでは?と期待をかけたのですがそんなことはなくて、IntelliSense用には動作しませんでした。よって、summary, param, returnsだけ抑えておけば良いです。

var sum = function(x, y) {
    /// <summary>足し算</summary>
    /// <param type='Number' name='x'>引数1</param>
    /// <param type='Number' name='y'>引数2</param>
    /// <returns type='Number'></returns>
}
 
Rx.Disposable.Empty = new IDisposable;

C#と違ってfunctionの「下」にドキュメントコメントを書きます。また、ドキュメントコメントを使う場合は、関数本体はあってもなくても無視されるので、不要です。なお、ドキュメントコメントは-vsdoc.jsだけで有効なわけではなく、普通のjsファイルでも有効です。summary, paramは面倒くさかったら書かなくてもそんなに害はなさそうですが(但し引数違いのオーバーロードがある場合はsummaryで伝えてあげると使う人に優しい)、returns typeだけは欠かさず書いておきたい。これを書いておくと戻り値の型がVisualStudioに認識されるので、IntelliSenseを途絶さず利用できます。

制限事項としては関数のみにドキュメントコメントを埋め込むことが出来ます。vsdocを作る際にフィールドの型も認識させたい場合は、ダミーの変数を与えてあげればOK。

ジェネレータの解説

と、いった基本を抑えておけば、どんなライブラリに対してもvsdocを作れるね!じゃあ、rx-vsdoc.jsも手作業で作ろうか。と、思った時もありました。構造自体はjs自体をダンプでなんとかなる(と、いいなあ)だろうし、summaryやparamは諦めるとしてreturns typeだけを手作業で書くなら、どうせほとんどRx.Observableなので手間もそんなでもない。けど、rx.jsは難読化されていて引数の名前がイミフ、例えばRx.Observable.Range(k0, l0, m0)というんじゃ苦しい……。やっぱsummaryもparamも必要。でもどうすれば……?

そこで、インストールディレクトリを見てみるとScriptSharpなんてフォルダがあるんですよ。そう、RxJSはScript#でC#コードから生成されたJavaScriptライブラリだったのだよ、ナンダッテー!そして、ScriptSharp用のRxJS.dllには当然、完全なクラス構造と、引数の名前と型が保存されているし、更にはsummary用のxmlも用意されていた。つまり、ここからrx-vsdoc.jsを生成すればいいわけです。

というわけでリフレクション。型情報を取るため、早速Assembly.LoadFrom(”RxJS.dll”).GetTypes()とすると、落ちる。はあ、ScriptSharpのdllに依存してるのでそっちもないとダメなのね。というわけでScriptSharpのdllを幾つか参照に加えると、なんかうまく動かせない。ScriptSharpのdllはmscorlibの代替となってる(JSに変換可能なもののみに制限を加えてる?)から、一緒には動かせないとかそんな感じなのかなー、よくわからないけどとにかく動かせない、諦める。南無。無念。

そもそもLoadするからダメなわけで、Loadしなくていいよ、型情報だけ取れればそれでいいんだって。でも標準ライブラリには、それを可能にするのはないっぽい。けど、Monoにはあった。Cecil - Mono。参照も書き換えも出来るようですが、今回は参照のみで。色々出来そうなので、いつかもう少し触ってみたいですね。私は今回はじめてMono.Cecil.dllを使ったのですが、リファレンスの類も見てない(あるのか知らない)し、チュートリアルの類も見てない(ていうか日本語の情報がない)。でも、IntelliSenseでドット打ってれば何とかなりました。しっかりした構造とちゃんとしたメソッド名とIntelliSenseがあれば、リファレンスがなくても問題なく使えるわけです。すばらしきこのせかい!

Mono.Cecil

型情報を取ってくるだけなら簡単で、というかSystem.Reflectionと大して変わりません。

var rxjsTypes = AssemblyFactory.GetAssembly("RxJS.dll")
    .MainModule.Types.Cast<TypeDefinition>()

TypeDefinition, MethodDefinition, ParameterDefinitionといったのが個の要素。そして、対応するコレクションHogeCollectionが用意されています。HogeCollectionは残念ながらジェネリックではないため、Linqに流すためにはCastが必要になります。今回はParameterDefinitionCollectionのSelectを多用することが多かったので、Cast無しで使えるよう拡張メソッドを定義しちゃいました。

static IEnumerable<T> Select<T>(this ParameterDefinitionCollection source, Func<ParameterDefinition, T> selector)
{
    return source.Cast<ParameterDefinition>().Select(selector);
}

この手のレガシーなコレクションに対するアドホックな対応は、例えば正規表現のMatchCollectionなんかにも使えそうです(と、いった発想の元ネタはAchiralから)

テンプレート置換

必要なJSの構造は上のほうで書いた通り決まったパターンがあるので、雛形を元に置換するのが楽。テンプレートエンジン、なんていう大仰なものは必要ないけれど、string.Formatでも{5}とか出てくると引数の管理が面倒だし、順番の変更にも弱い。なので簡易置換用の拡張メソッドを用意してみました。

static string TemplateReplace(this string template, object replacement)
{
    var dict = replacement.GetType().GetProperties()
        .ToDictionary(pi => pi.Name, pi => pi.GetValue(replacement, null).ToString());
 
    return Regex.Replace(template,
        "{(" + string.Join("|", dict.Select(kvp => Regex.Escape(kvp.Key)).ToArray()) + ")}",
        m => dict[m.Groups[1].Value]);
}

オブジェクトを渡すと、{プロパティ名}の部分をプロパティの値に置換します。オブジェクトなのでクラスインスタンスでもいいのですが、匿名型も使えます。例えば

const string classTemplate = @"
{FullName} = function({Parameters})
{
    /// <summary>{Summary}</summary>
{Param}
}";
 
var r = classTemplate.TemplateReplace(new
{
    FullName = "Rx.Notification",
    Parameters = "kind",
    Summary = "Represents a notification to an observer.",
    Param = "    /// <param type='String' name='kind'></param>"
});
 
Console.WriteLine(r);

割と便利。たった9行なので、ちょっと気の利いた置換が欲しいなあ、って時にササッとコピペして取り出せるのが魅力です。最近、コピペに優しいプログラミングをよく考えてる。というのはともかくとして、実際どんな風に使っているかというと、

var classes = rxjsTypes
    .Where(t => t.Constructors.Count > 0)
    .Select(t => new
    {
        t.FullName,
        Parameters = t.Constructors.Cast<MethodDefinition>()
            .Select(m => m.Parameters)
            .MaxBy(p => p.Count)
            .Select(p => p.Name)
            .ToJoinedString(", "),
        Summary = summaries[t.FullName] + " " + t.Constructors.Cast<MethodDefinition>()
            .OrderBy(m => m.Parameters.Count)
            .Select(m => m.Parameters.Select(p => p.Name).ToJoinedString(", "))
            .Select((s, i) => string.Format("{0}:({1})", i + 1, s))
            .ToJoinedString(", "),
        Param = t.Constructors.Cast<MethodDefinition>()
            .MaxBy(m => m.Parameters.Count)
            .Parameters
            .Select(p => string.Format(Template.Param, p.ParameterType.ToJSName(), p.Name))
            .ToJoinedString(Environment.NewLine),
    })
    .Select(a => Template.Class.TemplateReplace(a));

前段階で匿名型を生成して、最後のSelectで置換をかけてます。Select二段にしないでもいんじゃね?というとYESですが、このほうが見やすいと思うので。それにしてもリフレクションなわけで、Linqと非常に相性が良い。というか、Linqなしだと大量のforループとifで涙を流すことになりそう。なので、昔はリフレクションって結構敷居が高かったのですが、今はもうLinqでサクサクとWhereで切って捨ててSelectで繋げて繋げて、って出来るので書く分には楽チンです。これがLinq以前のC#2.0だったら、考えたくないなあ。

出力

クラス、継承、オブジェクト、メソッド、プロパティは全部バラバラに抽出しています。そして、全部IEnumerable<string>で止めています。最後にそれらをまとめて、テキストとして出力。

var vsdoc = Enumerable.Repeat(string.Format(Template.Object, RootNamespace), 1)
    .Concat(classes)
    .Concat(inheritance)
    .Concat(objects)
    .Concat(methods)
    .Concat(properties)
    .ToJoinedString(Environment.NewLine);
 
File.WriteAllText("rx-vsdoc.js", vsdoc, Encoding.UTF8);

せっかくクエリ遅延評価にさせているので、書き出しも一度stringに貯めないでストリームで書きだせば高効率ですねー。でも、一度文字列に出した方が書くの楽なので。せいぜい1000行程度なので、ケチッても意味ないですな。

全部rxjsTypesをルートにして生成しているので、クエリ構文を使って巨大な一塊にしてみたら面白かったかな、なんて思いますが若干悪趣味な気もするのでやめておきます。そもそも、このドットだらけ、Selectだらけの時点で若干どうよ、といった趣が漂っているのは間違いない。いやいや、ドット素敵です。Linq素敵なんだって、本当に。こういうの書いてるとC#2.0と3.0は別物だろ常識的に考えて、と思わなくもない。セミコロン率は物凄く低くなりましたね……。あと、LinqとSQLを関連付けるのはそろそろやめようぜー、的な思いがふと過ぎったり。Twitterのpublic検索でlinqをキーワードに毎日眺めてるんですが、今でも割とそういう印象持ってる人多いんだなー、と。だからどうしたとかどうなるってこともないですが。

まとめ

IntelliSenseでLinqはより楽しくなる。メソッドチェインはIntelliSenseでより楽しくなる。そして、VisualStudioはJavaScriptエディタとしても優秀なので皆VisualStudio使おう!インストールが面倒?Microsoft Visual Studio 2008 Express EditionからWeb インストールをクリックするだけでオールインワンでダウンロード含めて10分ぐらいで全部やってくれる。時間がかかるというのは正しいですが、意外と面倒くさくはないんです。それと、このExpress Editionは無料です。

入力補完だけじゃなく、コード整形やデバッガ(開発環境と完全統合されているためFirebugよりもずっと使いやすい)などもあるし、ある程度は裏でインタプリタをぶん回して変数名間違いなどのエラーを補足してくれるので、IDE無しでJavaScript書くなんて、そんな苦労、しなくてもいいんだよ……。

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