linq.jsやRxJSのベンチマーク

どうも、定期的linq.js - LINQ for JavaScript宣伝の会がやってまいりました。最近はページビューも絶好調、なのだけどDL数はそこまで伸びない(でも同種のライブラリよりもDL数多かったりするので需要が限界値と思われる)などなどな近況ですがこんばんわ。乱立するLinqのJavaScript実装……。などと言うほどに乱立はしてないし、そもそも2009/04に最後発で私が出したのが最後で、それ以降の新顔は見かけないのですが(しいて言えばRxJS)、ちょうどjLinqを実装した人が、ベンチ結果がボロボロだった、作り直してるという記事を出したので、ほぅほぅとそのベンチマークを見て、ちょっと改良して色々なLinq実装で比較してみました。

jOrderのベンチに色々足したもの

左のがIE8、重ねて後ろ側のがChrome。この画像は77件のJSONをGroupIDが107か185のもののみをフィルタして配列を返すという処理を1000回試行したもの。毎度思いますが、V8恐ろしく速い。そりゃnode.jsとか普通に現実的な話ですよね、大変素晴らしい。

jOrderについて

このベンチマークは、もとはjOrderという、Linq……ではなくてSQL風のもので(SQLっぽいのは結構いっぱいあります)、巨大なJSONを効率よく抽出するために、先にインデックス的なのを作ってそれから処理すれば速くなるよ!というライブラリが先々月ぐらいに出来たばっからしいのですが、それがjLinqと比較してこれだけ速いぜ!とやっていたようです。結果見る限りはjLinqクソ遅くてjOrderクソ速くて凄ー、となったのですが、なんかどーにも胡散臭さが拭えないわけですよ、ベンチ詐欺に片足突っ込んでいるというか。

jOrderは初回にインデックスっぽいものを作成するので、二回目以降の抽出は爆速、というのがウリ(っぽい)ようで、ベンチは確かに速い。で、その初回のインデックス生成は何時やってるんでしょうか?このベンチのソースを見ると、ボタンを押してからじゃなくて、ページのロード時にやってますね……。あの、それも立派なコストなのですが、無視ですか?無視ですか?そりゃあ試行回数を1000でベンチ取るならば無視出来るほどに小さいかもですね?でも、Test Cycles 1とか用意しているわけですが、どうなんでしょうね、インデックス作成時間を無視するのは、ちょっと卑怯すぎやしませんか?そもそも対象にひぢょーに遅いjLinq「だけ」を選んでいるというところがやらしい。

というわけで、オリジナルのベンチにはないのですがwith create indexというボタン押してからインデックスを作成する項目を足しました。1000回の試行では、コンセプトに乗っ取るなら1回のインデックス作成にすべきなんでしょうが、普通に1000回インデックス作成に走るのでクソ遅いです。あ、いや、別にアンチキャンペーン張ろうってわけじゃあないんですが、単純に面倒なので……。インデックス作成コストは試行回数1にすれば分かる。

ベンチ結果を見ると、まず、インデックス的なものの作成には非常にコストがかかってる。そして、わざわざコストをかけて生成したところで、Small table(77件のJSON)では、フィルタリングに関してはjQueryの$.grep、つまりは何も手をかけてないシンプルなフィルタリングと同じ速度でしかなくて、あまり意味が無い。Large table(1000件のJSON)ではそれなりな効果が出ているようですが、インデックス作成コストをペイするまでの試行回数を考えると、やはりあまり意味がなさそうな……。コンセプトは面白いんですが、それ止まりかなあ。機能的には、このインデックス生成一点勝負なところがあるので、他のLinq系ライブラリのような多機能なクエリ手段があるわけでもないし。

その他のライブラリについて

どれも似たり寄ったりで同じことが出来ますが、処理内容は全然違います。linq.jsは遅延評価であることと、列挙終了時にDisposeすることを中心に据えているので、シンプルにフィルタするだけのもの(jQueryの$.grepとか)よりも遥かに遅くなっています。JSINQも同じく遅延評価で、実装も大体似てます。なので、計測結果もほぼ同じですが、linq.jsのほうが遅い。これは、jsinqはDisposeがないため、その分の速度差が出ています(それ以外にも、単純にlinq.jsのほうが色々処理挟んでて遅め)。

LINQ to JavaScript(JSLINQ)はLINQの名を冠していますが、即時評価で、中身はただの配列のラッパーです。その分だけ単純な実装になっているので、単純なことをこなすには速い。jQueryの$.grepも同じく、普通に配列をグルッとループ回してifで弾いて、新しい配列にpushして、新しい配列を返すもの。というわけで、両者はほとんど同じ速度です。ただ、若干jQueryのほうが速いようで。これは、JSLINQはthis.itemsという形で対象の配列にアクセスしていて、それが速度差になってる模様。var items = this.itemsと列挙の前に置いてやれば、jQueryとほぼ同じ速度になる。1000回の試行だと20msecぐらいの差にはなるようですね。これが気にするほどかは、どうでしょう……。私は全く気にしません。

残念なことにめっちゃ遅いjLinqは、うーん、中はevalだらけだそうで、それが響いたそうです。と、作者が言ってるのでそうなのでしょう(適当)。RxJSも割と遅いんですが、これはしょうがないね!C#でもToObservableで変換かけたものの速度は割と遅くなるし。構造的に中間にいっぱい処理が入るので、そういうものだということで。

速度ねえ……

jLinqはさすがにアレゲなのですが、それ以外は別に普通に使う範囲ではそんな致命的に低速ってわけでもないんで、あまり気にしなくても良くね?と、かなり思ってます。linq.jsは速度を犠牲にして遅延評価だのDisposeだの入れてるわけですが、勿論、犠牲にしたなりのメリットはある(表現できる幅がとっても広がる)し。その辺はトレードオフ。配列をSelectしてToArrayするだけ、とかWhereしてToArrayするだけならば、、どうせjQueryも一緒に使うでしょ?的に考えて、jQueryの$.map, $.grepを使えば精神衛生上良いかもしれません。これは、C#で言うところのArray.ConvertAllは化石メソッドだけど、SelectしてToArrayならばConvertAllのほうが高効率なんだぜ(内心はどうでもいーんだけど)、といったようなノリで補えば良いでしょう。

それにしても、何でjQueryは$.eachの引数がmapやgrepと逆(eachだけindexが第一引数で値が第二引数)なんですかね。これ、統一してたほうが良いし、だいたいがして値が第一引数のほうが使いやすいのに。もう今更変えられない、ということなのかしらん。

そういえばで、せっかくなので「表現できる幅」の例として、ベンチには第一ソートキーにCurrency、それが重複してた場合の第二ソートキーにTotalを指定してみた例(OrderBy.ThenBy)とか(linq.js無しで書くとちょびっと面倒だよ!)、GroupIDでグルーピングした後にTotal値を合計といった集計演算(これもlinq.js無しだと面倒だよ!)とかを入れておいたので、良ければ見といてください。はい。まあ、別にこの辺はeager evaluationでも出来るというかソートもグルーピングも一度バッファに貯めちゃってるんですけどね!

まとめ

JSINQは良く出来てると思うのよ。ほんと(私はただのLinqマニアなので、基本的に他の実装は割と読んでますですよ)。ベンチ的にもlinq.jsより速いし(Disposeないからね、でもDispose使うシーンがそもそもあんまないという)、文字列クエリ式も(使わないけど)使えるし。じゃあ、JSINQじゃなくてlinq.jsがイイ!というような押しは、そこまであるかないか、どうなんでしょうね。1.メソッドの数が全然違う 2.ラムダ式的な文字列セレクターが使える 3.Dispose対応 4.RxJSにも対応 5.jQueryにも対応 6.WSHにも対応 7.VS用IntelliSense完備。ふむ、結構ありますね。というわけでlinq.jsお薦め。冒頭でも言いましたが最近のCodePlex上でのページビュー/ダウンロード数を見ると、競合のlinq移植ライブラリの中でもトップなんですよ、えへへ。まあ、4DL/dayとかいうショボい戦いなのですが。

jLinqの人が、パフォーマンス改善のついでにLinqという名前をやめてブランディングやり直すって言ってますが、きっと正しいと思う。「Linq」という名前がつく限りは「.NETの~」という印象が避けられないし、そのせいで敬遠されるというのは、間違いなくある。jLinqは、中身全然Linqじゃない独特な感じのなので、名前変えるのは、きっと良い選択。

linq.jsは100% Linqなので名前がどうこうってのはないですが、しかし、RxJSもそうなのだけど、.NET以外の人にも使って欲しいなって気持ちはとてもあります。やれる限りは頑張ってるつもりなんですが、中々どうして。JavaScriptエディタとしてのVisual Studioの使い方入門は100ブクマまであとちょい!な感じで、そういうとこに混ぜて宣伝とかいうセコい策を取ってはいるものの(いや、別にそういうつもりでやったわけでもないですが)色々と難すぃー。海外へも少しは知名度伸ばせたようなのだけど、そこでも基本的には.NET圏のみって雰囲気で、どうしたものかしらん。

つまるところ、そろそろ御託はどうでもいいから、RealWorldな実例出せよって話ですね!

Profile

Yoshifumi Kawai

Cysharp, Inc
CEO/CTO

Microsoft MVP for Developer Technologies(.NET)
April 2011
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July 2025

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