linq.js ver.2.2.0.0 - 配列最適化, QUnitテスト, RxJSバインディング

CodePlex - linq.js - LINQ for JavaScript

linq.jsをver 2.2に更新しました。変更事項は、メソッドの追加、配列ラッピング時の動作最適化、ユニットテストのQUnitへの移行、RxJSバインディング追加の4つです(あと、若干のバグフィックスと、RxJS用vsdoc生成プログラムの同梱)。まずは、追加した二つのメソッドについて。

var seq = Enumerable.From([1, 5, 10, 4, 3, 2, 99]);
 
// TakeFromLastは末尾からn個の値を取得する
var r1 = seq.TakeFromLast(3).ToArray(); // [3, 2, 99]
// 2.0から追加されているTakeExceptLast(末尾からn個を除く)と対になっています
var r2 = seq.TakeExceptLast(3).ToArray(); // [1, 5, 10, 4]
 
// ToJSONはjson文字列化します(列挙をJSON化なので必ず配列の形になります)
// JSON.stringifyによるJSON化のため、
// ネイティブJSON対応ブラウザ(IE8以降, Firefox, Chrome, Opera...)
// もしくはjson2.jsをインポートしていないと動作しません
var objs = [{ hoge: "huga" }, { tako: 3}];
var json = Enumerable.From(objs).ToJSON(); // [{"hoge":"huga"},{"tako":3}]

TakeFromLast/TakeExceptLastはRxからの移植です(Rxについては後でまた少し書きます)。RxではTakeLast, SkipLastという名前ですが、諸般の都合により名前は異なります。より説明的なので悪くはないかな、と。

もう一つはToJSONの復活。ver 1.xにはあったのですが、2.xでばっさり削ってたました。復活といっても、実装は大きく違います。1.xでは自前でシリアライズしていたのですが、今回はJSON.stringifyに丸投げしています。と、いうのも、IE8やそれ以外のブラウザはJSONのネイティブ実装があるので、それに投げた方が速いし安全。ネイティブ実装はjson2.jsと互換性があるので、IE6とかネイティブ実装に対応していないブラウザに対しては、json2.jsを読み込んでおくことでToJSONは動作します。

json2.jsはネイティブ実装がある場合は上書きせずネイティブ実装を優先するようになっているので、JSON使う場合は何も考えずとりあえず読み込んでおくといいですね。

配列ラップ時の最適化

Any, Count, ElementAt, ElementAtOrDefault, First, FirstOrDefault, Last, LastOrDefault, Skip, SequenceEqual, TakeExceptLast, TakeFromLast, Reverse, ToString。

Enumerable.From(array)の直後に、以上のメソッドを呼んだ際は最適化された挙動を取るように変更しました。各メソッドに共通するのは、lengthが使えるメソッドということです。Linqは基本的に長さの情報を持っていない(無限リストとか扱えるから)ため、例えばCountだったら最後まで列挙して長さを取っていました。しかし、lengthが分かっているのならば、Countはlengthに置き換えられるし、Reverseは[length - 1]から逆順に列挙すればいい。ElementAt(n)はまんま[n]だしLastは[length - 1]だし、などなど、lengthを使うことで計算量が大幅に低減されます。

C#でも同様のことをやっている(ということは以前にLinqとCountの効率という記事で書いてあったりはする)のですが、今になってようやく再現。先の記事にあるように、C#では中でisやasを使ってIEnumerableの型を調べて分岐させてますが、linq.jsでは Enumerable.FromでEnumerableを生成する際に、今まではEnumerableを返していたところを、ArrayEnumerable(継承して配列用にメソッドをオーバーライドしたもの)を返す、という形を取っています。

これが嬉しいかどうかというと、そこまで気にするほどではありません。C#では array.Last() のように使えますが、linq.jsではわざわざ Enumerable.From(array).Last() と、ラップしなきゃいけませんから、それならarray[array.length - 1]でいいよ、という。ちなみに当然ですがFrom(array).Where().Count()とか、他のLinqメソッドを挟むと、ArrayEnumerableじゃなくEnumerableになるため最適化的なものは消滅します。

でもまあ、意味はあるといえばあります。配列を包んだだけのEnumerableは割と色々なところで出てきます。例えばGroupJoin。これのresultSelectorの引数のEnumerableは、配列をラップしただけです。又は、ToLookup。Lookupを生成後、Getで取得した際の戻り値のEnumerableは配列を包んだだけです。GroupByの列挙(Grouping)もそう。特にGroupingで、グループの個数を使うってシーンは多いように思います。そこで今まではCount()で全件列挙が廻っていたのが、一度も列挙せずに値が取れるというのは精神衛生上喜ばしい。

パフォーマンス?

このArrayへの最適化は勿論パフォーマンスのためなのですが、じゃあ全体的にlinq.jsのパフォーマンスはどうなの?というと、遅いよ!少し列挙するだけで山のように関数呼び出しが間に入りますから、速そうな要素が一つもない。ただ、遅さがクリティカルに影響するほどのものかは、場合によりけりなので分かりません。遅い遅いと言っても、jQueryでセレクタ使って抽出してDOM弄りするのとどちらが重いかといったら、(データ量にもよりますが)圧倒的にDOM弄りですよね?的な。

JavaScriptは、どうでもいいようなレベルの高速化記事がはてブなんかにも良く上がってくるんですが、つまらない目先に囚われず、全体を見てボトルネックをしっかり掴んでそこを直すべきだと思うんですよね。「1万回の要素追加で9msの高速化」とか、意味無いだろそれ絶対と思うのですが……。

ただ、アプリケーションとライブラリだと話は別で、ライブラリならば1msでも速いにこしたことはないのは事実です。linq.jsは仕組み的には遅いの確定なのはしょうがないとしても、もう少しぐらいは、速度に気を使って努力すべきな気はとてもします。今後の課題。

コードスニペット

無名関数書くのに、毎回function(x) { return って書くの、面倒くさいですよね。ということで、Visual Studio用のコードスニペットを同梱しました。func1->Tab->Tabで、linq.jsで頻繁に使う一行の無名関数 function(x){ return /* キャレットここ */ } を生成してくれます。これは激しく便利で、C#の快適さの3割ぐらいを占めていると言っても過言ではないぐらいに便利なのですが、動画じゃないと伝わらないー、けれど動画撮ってる体力的余裕がないので省略。

func0, func1, func2, action0, action1, action2を定義しています。0だの1だのは引数の数。funcはreturn付き、actionはreturn無しのスニペットです。また、Enumerable.RangeとEnumerable.Fromにもスニペットを用意しました。erange, efromで展開されます。jQueryプラグイン版の場合はjqrange, jqfromになります。

インストールは、Visual Studio 2010でツール→コードスニペットマネージャーを開いてインポートでsnipetts/.snippetを全部インポート。

binding for RxJS

RxJS -Reactive Extensions for JavaScriptと接続出来るようになりました。ToObservableとToEnumerableです(jQuery版のTojQueryとtoEnumerableと同じ感覚)。

// enumerable sequence to observable
var source = Enumerable.Range(1, 10)
    .Shuffle()
    .ToObservable()
    .Publish();
 
source.Where(function (x) { return x % 2 == 0 })
    .Subscribe(function (x) { document.writeln("Even:" + x + "<br>") });
 
source.Where(function (x) { return x % 2 != 0 })
    .Subscribe(function (x) { document.writeln("Odd:" + x + "<br>") });
 
source.Connect();
 
// observable to enumerable
var subject = new Rx.ReplaySubject();
 
subject.OnNext("I");
subject.OnNext(4);
subject.OnNext("B");
subject.OnNext(2);
subject.OnNext("M");
 
var result = subject.ToEnumerable()
    .OfType(String)
    .Select(function (x) { return x.charCodeAt() - 1 })
    .Select(function (x) { return String.fromCharCode(x) })
    .ToString("-");
 
alert(result); // H-A-L

ToObservableでは、こないだ例に出したPublishによる分配を。ToEnumerableは、例が全然浮かばなかったので適当にOnNextを発火させた奴をEnumerable化出来ますねー、と。なお、cold限定です。hotに対して適用すると空シーケンスが返ってくるだけです(ちなみにC#版のRxでhotに対してToEnumerableするとスレッドをロックして無限待機になる)

それと、RxVSDocGeneratorの最新版を同梱してあります。以前に公開していたのは、RxJSのバージョンアップと同時に動かなくなっちゃってたのよね。というわけで、修正したうえで同梱商法してみました。

プレースホルダの拡張

無名関数のプレースホルダが少し拡張されました。今までは引数が一つの時のみ$が使えたのですが、今回から二引数目は$$、三引数目は$$$、四引数目は$$$$が使えるようになりました。

// 連続した重複がある場合最初の値だけを取る
// (RxのDistinctUntilChangedをlinq.jsでやる場合)
// 1, 5, 4, 3, 4
Enumerable.From([1, 1, 5, 4, 4, 3, 4, 4])
    .PartitionBy("", "", "key,group=>group.First()")
// $$でニ引数目も指定出来るようになった
Enumerable.From([1, 1, 5, 4, 4, 3, 4, 4])
    .PartitionBy("", "", "$$.First()")

便利といえば便利ですが、あまりやりすぎると見た目がヤバくなるので適度に抑えながらでどうぞ。なお、以前からある機能ですが”"は”x=>x”の省略形です。PartitionByでは、それぞれkeySelectorとelementSelector。

入門QUnit

今までlinq.jsのユニットテストはJSUnitを使用していたんですが、相当使いにくくてやってられなかったため、QUnitに移しました。QUnitはjQueryの作者、John Resigの作成したテストフレームワークで、流石としか言いようがない出来です。物凄く書きやすい。JSUnitだとテストが書きづらくて、だから苦痛でしかなかった。テストドリブンとか言うなら、まずはテストが書きやすい環境じゃないとダメだ。

JSUnitのダメな点―― 導入が非常に面倒。大量のファイルを抱えたテスト実行環境が必要だし、クエリストリングでファイル名を渡さなければならなかったり、しかも素ではFirefox3で動かなかったりと(Firefox側のオプションを調整)下準備が大変。面倒くささには面倒くささなりのメリット(Java系の開発環境との連携とかあるらしいけど知らない)があるようですが、俺はただテスト書いて実行したいだけなんだよ!というには些か重たすぎる。一方、QUnitはCSSとJSとHTMLだけで済む。

また、JSUnitはアサーションのメソッドが微妙。大量にあるんだけど、逆に何が何だか分からない。assertObjectEqualsとかassertArrayEqualsとか。ArrayEqualsはオブジェクトの配列を値比較してくれない上に、それならせめて失敗してくれればいいものの成功として出されるから役に立たなかったり、ね……。QUnitは基本、equal(参照比較)とdeepEqual(値比較)だけという分かりやすさ。deepEqualはしっかりオブジェクト/配列をバラして再帰的に比較してくれるという信頼感があります。

テスト結果画面の分かりやすさもQUnitに軍配が上がる。というかJSUnitは致命的に分かりづらい。一つのテスト関数の中に複数のアサートを入れると、どれが失敗したか分からないという有様。なのでJSUnitではtestHoge1, testHoge2といった形にせざるを得ないのだけど、大変面倒。更に、JSUnitのテスト実行は遅くて数百件あるとイライラする。

そもそもJSUnitはコードベースが古いし最近更新されてるかも微妙(GitHubに移って開発は進んでるようですが)。というわけで今からJavaScriptでユニットテストやるならQUnitがいいよ!残念ながらか、ネットを見ると古い紹介記事ばかりが見当たるので、ていうかオフィシャルのドキュメントまで古かったりしてアレゲなので、簡単に解説します。と、思ってたのですが、一月程前に素晴らしいQUnitの記事が出ていました。なので基本無用なのですが、文章を書いてしまってあったので(これ書いてたのは4月頃なのです)出します、とほほ。

まず、QUnit - jQuery JavaScript LibraryのUsing QUnitのところにあるqunit.jsとqunit.cssを落とし、下記のテンプレHTMLは自前で作る。ファイル名はなんでもいいんですが、私はtestrunner.htmとでもしておきました。

<!DOCTYPE html PUBLIC "-//W3C//DTD XHTML 1.0 Transitional//EN" "http://www.w3.org/TR/xhtml1/DTD/xhtml1-transitional.dtd">
<html xmlns="http://www.w3.org/1999/xhtml">
<head>
    <title>linq.js test</title>
    <link href="qunit.css" rel="stylesheet" type="text/css" />
    <script src="qunit.js" type="text/javascript"></script>
    <!-- テストに必要な外部ライブラリは好きに読み込む -->
    <script src="linq.js" type="text/javascript"></script>
    <!-- ここにテスト直書きもアリだし -->
    <script type="text/javascript">
        test("Range", function()
        {
            deepEqual(Enumerable.Range(1, 3).ToArray(), [1, 2, 3]);
        });
        // 自動的にロード後に実行されるので、これも問題なく動く
        test("hoge", function ()
        {
            var h2 = document.getElementsByTagName("h2");
            equal(h2.length, 2);
        });
    </script>
    <!-- 外部jsファイルにして読み込むのもアリ -->
    <script src="testEnumerable.js" type="text/javascript"></script>
    <script src="testProjection.js" type="text/javascript"></script>
</head>
<body>
    <h1 id="qunit-header">linq.js test</h1>
    <h2 id="qunit-banner"></h2>
    <h2 id="qunit-userAgent"></h2>
    <ol id="qunit-tests"></ol>
</body>
</html>

実行用のHTMLにqunit.jsとqunit.cssを読み込み、body以下の4行を記述すれば準備は完了(bodyの4行はid決め打ちで面倒だし、どうせ空なので、qunit.js側で動的に生成してくれてもいいような気がする、というか昔はそうだった気がするけどjQuery依存をなくした際になくしたのかしらん)。

あとは、test(”テスト名”, 実行される関数) を書いていけばいいだけ。そうそう、test関数はHTMLが全てロードされてから実行が始まるので、jQuery読み込んでjQuery.readyで囲む必要とかは特にありません。testProjection.jsは大体↓のような感じ。

/// <reference path="testrunner.htm"/>
 
module("Projection");
 
test("Select", function ()
{
    actual = Enumerable.Range(1, 10).Select("i=>i*10").ToArray();
    deepEqual(actual, [10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100]);
    actual = Enumerable.Range(1, 10).Select("i,index=>i*10+index").ToArray();
    deepEqual(actual,[10, 21, 32, 43, 54, 65, 76, 87, 98, 109]);
});

reference pathはVisualStudio用のパスなのであんま気にせずにー。詳細はJavaScriptエディタとしてのVisual Studioの使い方入門のほうで。読み込み元のHTMLを指定しておくとIntelliSenseが効いて、書くのが楽になります。

actual(実行結果)は私は別変数で受けてますが、当然、直書きでも構いません。アサーション関数は、基本は(actual, expected(期待する結果), message(省略可能)) の順番になっています。

equal(1, "1"); // okay - 参照比較(==)
notEqual
strictEqual(1, "1"); // failed - 厳密な比較(===)
notStrictEqual
deepEqual([1], [1]); // okay - 値比較
notDeepEqual
ok(1 == "1"); // okay - boolean
ok(1 !== "1");  // okay - notの場合は!で

基本的に使う関数はこれらだけです。ドキュメントへの記載はないのですが、以前にあったequalsとsameはequalとdeepEqualに置き換わっています。後方互換性のためにequals/sameは残っていますが、notと対称が取れるという点で、equal/deepEqualを使ったほうが良いんじゃないかと思います。

非同期テストとかは、またそのうちに。

まとめ

linq.js ver.2出したときには、もう当分更新することなんてないよなあ、なんて思っていたのですが、普通にポコポコと見つかったり。でもさすがに、もうないと思いたい。C#との挙動互換性も、私の知る限りでは今回の配列最適化が最後で、やり残しはない。そして今回がラストだー、とばかりに思いつく要素を全部突っ込んでやりました。

そんなわけなので、使ってやってください。私がVisualStudio使いなのでVS関連の補助が多めですが、別にVS必須というわけじゃなくプラスアルファ的なもの(入力補完ドキュメントだのコードスニペットだの)でしかないので、エディタ書きでも何ら問題なく使える、かな、きっと。

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